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2021年は100作近い絵本を読み、当サイトにて66作品をレビューしました。その中から選りすぐりの絵本10作品を紹介します。以下10作品は順不同です。
1.『マイロのスケッチブック』
作/マット・デ・ラ・ペーニャ、絵/クリスチャン・ロビンソン、訳/石津ちひろ
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『マイロのスケッチブック』は、見かけだけで人を判断する問題点と、偏見に気付く少年の成長を描いた絵本です。
少年マイロは同じ電車に乗った人を想像し絵を描きます。しかし描いたばかりの絵が気に入らなくて、スケッチブックを閉じました。そして窓に映る自分の姿を見て、人はどんなことを想像するのだろうかと考えます。
想像力の無限の可能性を描いた絵本は多くありますが、読者を想像の楽しさから一歩先へ導きます。先進性と思いやりに溢れた非常に優れた絵本です。
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2.『こねことコート』
作/いわたきよみ
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『こねことコート』は、ねこの親子の物語です。秋も近づいたころ、母親は子どもに素敵なコートを買ってあげます。「はやくこれを着てお出かけしたいなあ」と子どもはうれしくてたまりません。
しかしある時、お母さんが風邪をひいてたおれてしまいます。働きはじめた子どもは、毎日に一生懸命で、飛ぶように時間が流れていきます。
そんなある日、子どもは母親に買ってもらったコートのことを思い出しますが……。親子の愛と、時の移り変わりを描いた作品で、ほかの絵本にない構成と描き方で優れた魅力があります。
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3.『海のアトリエ』
作/堀川理万子
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『海のアトリエ』は、少女“わたし”が、おばあちゃんが絵描きさんのアトリエで過ごした特別な思い出を聞く物語です。
事情により学校に行けなくなったおばあちゃんは、絵描きさんといっしょに創作料理を食べたり、本を読んだり、不思議な体操をしたり、水着を着て海に出かけたり、美術館に出かけたりなど様々なことを体験します。
その自由で楽しそうな、一見関連性のない様々な出来事が影響し、おばあちゃんの心につかえている感情を救い、将来に影響を与えているようで心が洗われるような読後感があります。
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4.『オオカミ県』
文/多和田葉子、絵/溝上幾久子
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『オオカミ県』は、大変に興味深い世界観と現代への風刺が匠に表現されたディストピアを描いた絵本です。
オオカミ県出身の"俺"が、ある目的のためオオカミになる決断を物語で、マイノリティに対する差別と権力の横暴を、動物と架空の日本を用いシュールでブラックユーモアの利いた警鐘を鳴らしています。
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5.『もりにきたのは』
作/サンドラ・ディークマン、訳/牟禮あゆみ
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『もりにきたのは』は、海に流されて森にやってきたシロクマの物語です。シロクマは森の動物たちが初めて見る生き物で、森の動物たちはよそ者であるシロクマを恐れ、避けるようになります。
美しい幻想的なイラストで描かれたこの絵本は、コミュニケーションの重要性と、話しかけるはじめの一人となる勇気の大事さが表現されていて、不慣れな人に対する恐れから始まる差別をなくす出発点となる作品です。
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6.『さむがりやのスティーナ』
作/ラニヤマモト、訳/朱位昌併
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『さむがりやのスティーナ』は、冬の間は絶対に外に出ない、寒がり屋のスティーナの物語です。スティーナは寒さをしのぐため様々な発明品を創作します。アイデアに富んでいてとても楽しめます。
スティーナの寒がりは人付き合いと解釈できます。孤立している、というよりかむしろ、“孤立を選んでいる”ような読者にとって、スティーナの孤独を楽しむ様子は共感できます。読んでいるだけで寒くなってくるような絵本ですが、スティーナある決断とその思いが、温かさを感じさせてくれます。
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7.『音楽をお月さまに』
文/フィリップ・ステッド、絵/エリン・ステッド、訳/田中万里
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『音楽をお月さまに』は、ひとり静かにチェロを弾くのが好きなハリエットの物語です。親からの、将来は大きなオーケストラでチェロを弾くだろう、という期待が精神的な圧力となっています。
ハリエットは想像力を働かせることで、月と友だちになり、月のためにチェロを弾くことで自らを救います。ハリエットが現実に戻った時、彼女が小さな成長を(それが堂々と人前で演奏ができるというわけではなくても)していることが読者に想像でき、読んでいてこちらも救われた気持ちになれます。
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8.『ともだち?』
作/うえのよし(上野与志)、絵/さとうのぶこ
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『ともだち?』は、話すのが苦手でいつもひとりぼっちのおおかみが、友達を作るため、マラソン大会での優勝を目指す絵本です。
他者と心を通わせることの楽しさ、自分のしたことを省みて悪い行いを正すことの大切さを伝えている絵本です。
『十二支』『うさぎとかめ』の物語を意図的に踏襲しており、古典的なストーリーを現代的にリメイクしている良質な作品です。
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9.『おつきさまのスープ』
作/野中柊、絵/木原未沙紀
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『おつきさまのスープ』は、くろねこのクロロの誕生日パーティーから始まる物語です。幻想的で美しい絵と文がうまく調和しており、不思議で魅力的な世界が構築されています。
誕生日を祝う多くの生き物が登場しますが、そのどれもが絵本の主役として作品になれるほど丁寧に描かれています。衣装や食べ物、小物も細緻に描かれていてページを捲るたび惚れ惚れするほどです。
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10.『ふしぎな月』
文/富安陽子、絵/吉田尚令
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『ふしぎな月』は、あらゆる場所を明るく照らす、ふしぎな月を描いた絵本です。生命力をもたらす「ふしぎな月」が世界中を照らし、虫たちを妖精に変え、野原に花を咲かせます。
戦場に生きる子どもたちにも希望をもたらしますが、どことなく悲しさを兼ね備える絵本です。社会的な視点もあり、「ふしぎな月」から平和と平等の必要性を訴えかけているようです。
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