絵本『さくらちゃんのかえりみち』 - 家は、学校のとなり。一分で着いちゃう -

【データ】
・作品名: 『さくらちゃんのかえりみち』
・作者: 作/かさい まり、絵/吉田 尚令
・出版社: ガッケン
・発売年月: 2023年3月
・出版形態: 紙の本
・ページ数(作品部分): 32ページ
・サイズ: 縦26.5cm × 横22cm
・絵と文の比率: おおよそ 9:1 1ページ当たりの文字数は40字ほど
・対象年齢: 6歳~
・カタカナの有無: あり
・漢字の有無: あり
・ルビの有無: 総ルビ
・分かち書きの有無: あり
・縦書き、横書き: 横書き

【作者】
かさい まりは、北海道生まれの絵本作家。他に、『えらいこっちゃ!はじめてのプール』『どっちでもいい子』がある。
吉田 尚令は、大阪府生まれのイラストレーター。主な作品に、『ペンタとニック』『ふしぎな月
などで知られる。

【内容紹介】
新しいクラスで友だちを作りたい、さくらちゃん。放課後、クラスメイトに、一緒に帰ろうと誘われたけど、さくらちゃんの家は、学校のとなり。一分で着いちゃうんだと言ったら、その子は「なあんだ」と言って、違う子と帰っていった。一分なんてつまんない、と思っていると、ある日クラスに、転校生が来る。

【レビュー】
〈ストーリー〉
転校生のあおいちゃんに誘われたさくらちゃんは、あおいちゃんと一緒に帰ることになるが、一分で着いちゃうとは言えず、自分の家を通り過ぎて、帰り道を歩く。
次の日も、あおいちゃんといっしょに帰り道を歩くが、妹のあんりが、家の前で遊んでいたため、秘密がばれてしまう。
子どもにとってのちょっとした修羅場な展開に、読んでてドキドキする。

それでも、あおいちゃんは、「なあんだ。だったら はやく いえば よかったのに」と、気にすることなく優しく答える。あおいちゃんの素敵なセリフに、心あたたまる気持ちで読める。

「なあんだ」という言葉は、以前に別の子に言われた言葉で、使い方によって印象が異なることと、誰かを傷つけたり助けることにもなると、物語から伝わる。

〈絵と文〉
文章は読みやすく、小さな読者でも理解できる表現、文の長さで、明瞭な内容で簡潔に書かれている。また、よみ聞かせにも適していると思う。

絵は子どもたちが可愛らしく、黒丸の目が基本だけど表情も豊かで楽しく読める。
特に学校からの帰り道に描かれている、木漏れ日の絵が美しくて魅力的。

〈キャラクター〉
あおいちゃんに小さな嘘をついてしまったさくらちゃんだけど、物語の後半で、「たのしかったから いいそびれて」、と弁明している。
秘密を打ち明けているようにみえるけど、いいそびれたというより、あえて言わない選択をしているので、実際は、言い訳をしながら嘘を重ねているように読める。
いわゆる絵本らしい「やさしい」だけじゃない、人間的な複雑さが描かれているようにも読めるため、シンプルな絵本に見えて、印象に残る。

〈製本と出版〉
文字はほとんどのページで白地に黒で書かれていて、非常に読みやすい。

【評点】


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