絵本『夜をまもる騎士アウル』 - フクロウとドラゴンの共通点って? -

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 【データ】
・作品名: 『夜をまもる騎士アウル』
・作者: 作/クリストファー・デニス、訳/中井 はるの
・出版社: 化学同人
・発売年月: 2023年2月
・出版形態: 紙の本
・ページ数(作品部分): 42ページ
・サイズ: 縦28.5cm × 横24cm
・絵と文の比率: おおよそ 9:1 1ページ当たりの文字数は30字ほど
・対象年齢: 小学校1年~
・カタカナの有無: あり
・漢字の有無: あり
・ルビの有無: 総ルビ
・分かち書きの有無: あり
・縦書き、横書き: 横書き

【作者】
クリストファー・デニスは、アイルランド出身のイラストレーター。他に『ぶくぶくしげみをくるーり』がある。

中井 はるのは、東京都在住の児童文学翻訳家。主な作品に、『ローズ姫と黄金のめがね』『グレッグのダメ日記』など多数。

【内容紹介】
フクロウのアウルの夢は、勇敢で、賢くて、たくさんの友だちがいる、騎士になること。あるとき、お城から騎士たちが姿を消すようになり、騎士の学校はあたらしい騎士を募集する。見事合格したアウルは、夜の見張りを任せられるが、恐ろしいドラゴンが現れる。
【レビュー】
〈ストーリー〉
体が小さく、他の騎士とは違って、大きな剣や盾を持てないアウルだったが、フクロウであることの特性を生かし、夜の見張り番では問題なく居眠りしないで仕事ができる。
そんな夜の中、槍の先にマシュマロを付けて、火に当て焼いているアウルの様子は可愛くて、また、心温まるシーンとなっている。

恐ろしいドラゴンが現れ、あせるアウルだったが、機転を利かせてピザを取り出す。ファンタジー世界に突然、割と現代的な形態の宅配風ピザが出てくるのは面白くて、印象に残る。

その後、フクロウとドラゴンの共通点(夜遅くまで起きることが好きだったり、空の飛び方を教えることは難しいことだったり)を話し合い、ふたりは仲良くなる。
割りとありがちなストーリーだけど、作り込まれた世界観と、それを意図的に壊すような展開が楽しく読める。
〈絵と文〉
イラストはファンタジーな雰囲気が美しく描かれていて、世界に没入できるような、見事な表現がされている。小物まで丁寧に描かれていて、絵を見るだけでワクワクする感じ。

文章は、世界観を意識した感じの雰囲気に合ったものもあるけど、割と親しみやすい感じの文が多くて、軽やかに楽しく読める。
〈キャラクター〉
あんまりキャラクター性が掘られている絵本ではないけれど、フクロウのオウルが小さい体ながらもひたむきに騎士を目指し、努力し、夢を叶える様子は心打たれるし、また、希望に満ちている。
そういった「見合わない」夢を、両親が反対するような展開は多くあるが、この物語の両親はセリフはないものの静かに見守っているようで、心温まる。

〈製本と出版〉
文章が背景の絵と重なる箇所があるが、読みづらい部分はない。
総ひらがなの絵本なのに、タイトルページにふりがながないのは少し気になる。

【評点】



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