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動物、ファンタジー、食べ物など、様々な物事をテーマや舞台にした絵本がある中で、女の子が主人公の絵本を探している方も多いと思います。以下では選りすぐりのおすすめの女の子が主人公の絵本を10作品紹介します。
1.『アパートのひとたち』
(光村教育図書)作/エイナット・ツァルファティ、訳/青山南
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『アパートのひとたち』は、何気ない日常を想像力で楽しもうとする少女の物語です。
7階建てのアパートの7階に住んでいる“わたし”は、それぞれの階にどんな人が住んでいるか、想像しながら帰路につきます。
ドアを見てこの部屋にはハンターが住んでいる、吸血鬼が住んでいるはずだ、と空想しながら7階の自宅まで階段を登っていきます。一人で歩く退屈な帰り道でも、誰もが自由に開放的に考えることで、とても楽しく過ごせることを伝えています。
想像上のにぎやかな住民とは違って、いっしょに住んでいる両親は、彼女いわく、「すっごくふつう」です。でも少女は両親のことが大好きで、この幸福な対比にとても心あたたまります。
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2.『わたしは いいこ?』
(小学館)作/えがしらみちこ
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『わたしは いいこ?』は、「いい子」という言葉に疑問を持った語り手の少女が、意味や使い方を探る物語で、子どもの疑問と想像力の可能性が描かれている作品です。
「いい子」であるべきといった大人たちからの押し付けに近い言葉と、自身もそうあるべきだと思う気持ちで、なんだかいい子ってつかれちゃう、と少女は感じます。
「いい子」とされる、聞き分けのいい子とは大人にとってある種「都合のいい子ども」であって、子の伸び伸びとした自由な成長を制限する言葉になるかもしれません。
この絵本はありのまま子どもの自由な考えや行動を尊重する作品で、丁寧な気持ちの伝え方を考えるきっかけにもなる、保護者や教員など、子に携わる大人にも推奨できる作品です。
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3.『にんぎょのルーシー』
(トゥーヴァージンズ)文、絵/SOOSH、訳/高橋久美子
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『にんぎょのルーシー』は、人間の女の子エマと、海に住んでいる人魚のルーシーの物語です。人魚と人、住む場所も見た目も違うふたりが、友達となり仲良く過ごす友情の絵本です。地球環境の問題点もテーマに、それぞれの立場による違いと、重なり合う部分を描いています。
ふたりはそれぞれの違いを認識しながら、一緒に泳いだり、自転車に乗ったり、お茶会をしたりします。
特に素敵なシーンは、二人が釣り人の集まる海に潜り、こっそりと釣り糸に靴を引っかける箇所です。ふたりのいたずらに読者も参加しているような心地で読めます。
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4.『エリンとまっくろ岩のひみつ』
(評論社)作/ジョー・トッド=スタントン、訳/せなあいこ
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『エリンとまっくろ岩のひみつ』は「まっくろ岩」の伝説が残る港町が舞台の、怪物との友情を主題にした冒険物語です。「まっくろ岩」に興味を持った主人公の女の子エリンは、ママの漁船に忍び込みます。読んでいてとてもワクワクとする魅力があります。
多くの絵本では、性の固定観念に囚われて、こういったキャラは男性、こういったキャラは女性と決められているように描かれており、またそれらを強調することでキャラクターを際立たせることがあります。
しかしこの絵本で描かれているエリンの母は、男性優位な職業と思われがちな漁師をしています。おそらくシングルマザーでもあり、それらのことを特別なものとせず、あえて言及することもなく、当たり前のように描いているのもこの作品の魅力の一つです。
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5.『わたしお姫さまになれたよ』
(三恵社)作/丑野公輔、絵/榊原ますみ、監修/岡田新吾
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『わたしお姫さまになれたよ』は、生まれた時から目が見えない女の子、ちぃちゃんが、はじめて美容室へ行く物語です。
目が見えない子どもの想像力と夢の実現を、美容室での髪のセットを用いて描いた作品です。
障害の苦労を利用して感動させようとする物語やテレビ番組はときおり見かけますが、この作品はそんな類いのものではなく、主人公の目の見えないちぃちゃんは、いつも笑顔で想像力を働かせ日常を楽しんでいます。また、障害を軽んじている表現もなく健常者との違いも丁寧に描いている絵本です。
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6.『きょうりゅうレディ』
(出版ワークス)作/リンダ・スキアース、絵/マルタ・アルバレス・ミゲンス、訳/まえざわあきえ
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『きょうりゅうレディ』は、実在した女性の物語で、200年ほど前のイギリスで、重要な化石を多く発見したメアリー・アニングの伝記絵本です。
メアリーは家が貧しく、学校にも行けませんでしたが、独学で学者の書いた文章を書き写し、拾った化石を記録します。その努力の甲斐もあって、メアリーは素晴らしい発見を繰り返しますが、女性であることを理由に学会で認められませんでした。
メアリーは様々な化石を発見し、その数々は世界中の学者に広く知られますが、一方でメアリーの名前を口にするものはなく、またメアリーは地質学会にも入れてもらえず、大学で教えることも学ぶことも叶いませんでした。その残酷ともいえる当時の様子が丁寧に描かれています。
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7.『アフガニスタンのひみつの学校』
(さ・え・ら書房)作/ジャネット・ウィンター、訳/福本友美子
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『アフガニスタンのひみつの学校』は、タリバンに支配されたアフガニスタンが舞台の、実話をもとにした物語です。タリバン政権下のアフガニスタンは、女性が学校に行くことを禁止していました。
両親がいなくなってしまった少女ナスリーンは、一言もしゃべらなくなってしまいましたが、ナスリーンのおばあちゃんは、女の子のための「秘密の学校」があることを知り、そこへナスリーンを連れていくことにします。
タリバン政権下の痛ましい性差別と現実が描かれている作品で、学ぶことは人を豊かにし、逆にそれを制限すれば人の自由を奪うことにもなると伝えている絵本です。
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8.『ローズ姫と黄金のめがね』
(早川書房)文/ロウリー・ムーア、絵/ナタリー・オーウェン、訳/中井はるの
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『ローズ姫と黄金のめがね』は、眼鏡をかけたプリンセスのローズの絵本です。めがねをかけるのが嫌なローズの前に、もうひとりのローズがあらわれ、「めがねなんてかけたら、本物のプリンセスになれないわ」と、いじわるを言われることから物語は始まります。ローズは悩みの答えを見つけるため、冒険に出ることにします。
眼鏡をかけていても美しいと読者に伝える絵本で、眼鏡という多くの人が日常的に使用するものに対する、偏見やコンプレックスをなくす手助けとなる作品です。
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9.『せかいのはてまでひろがるスカート』
(ライチブックス)、作/ミョン・スジョン、訳/河鐘基、廣部尚子
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『せかいのはてまでひろがるスカート』は、少女のスカートから始まる、想像と世界をめぐる冒険を描いた物語絵本です。みつばちやカエル、てんとう虫やありなど様々な生き物に「あなたのスカートは せかいのはてまでひろがるの?」と質問し、その回答を受け、少女が想像力を働かせ、せかいのはてまでひろがるスカートを描きます。
想像力に満ちた冒険をするこの絵本は、制服などで、女性だからと決めつけられて履かされることもあるスカートという衣服を、抑圧からの解放として、自由の象徴としての意味に塗り変えるような、多くの人の救いとなる物語となっています。
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10.『リィーヤとトラ』
(カランダーシ)文/アンナ・フェドゥロヴァ、絵/ダリヤ・ベクレメシェヴァ、訳/まきのはらようこ
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『リィーヤとトラ』は、タイガとよばれる森で暮らしている、動物と会話ができる小さな女の子、リィーヤの物語です。森林監視員として働く父が森の中へ仕事へ出かけると、リィーヤは初めて見る大きな生き物に出会います。その生き物は、タイガの誇り高き主と呼ばれているトラでした。
聡明で心優しい女の子リィーヤが堂々と、森の支配者であるトラと物怖じせず議論を交わす様子は、とても力強い魅力があります。
恐怖を克服する勇気、動物に対する優しさと愛、そして、自然保護の重要性が描かれている絵本です。
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