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【データ】
・作品名: 『ぼくのスカート』
・作者: 文、絵/ピーター・ブラウン、訳、監修/日高 庸晴
・出版社: 小学館
・発売年月: 2023年2月
・出版形態: 紙の本
・ページ数(作品部分): 40ページ
・サイズ: 縦27.5cm × 横21.5cm
・絵と文の比率: おおよそ 9:1 1ページ当たりの文字数は20字ほど
・対象年齢: 5歳~
・カタカナの有無: あり
・漢字の有無: なし
・ルビの有無: ―
・分かち書きの有無: あり
・縦書き、横書き: 横書き
【作者】
ピーター・ブラウンは、アメリカの作家、イラストレーター。主な作品に、『野生のロボット』『きょうふのおばけパンツ』など。
日高 庸晴は、宝塚大学看護学部教授。セクシュアルマイノリティの理解推進・啓発事業に従事。著書に『もっと知りたい!話したい!セクシュアルマイノリティ』、訳書に『レインボーフラッグ誕生物語』がある。
【内容紹介】
フレッドは、はだかんぼ。それで、家中をぴょんぴょん。はだかんぼで、元気いっぱい、のびのび。お母さんとお父さんの部屋のクローゼットに入ったフレッドは、お母さんの服を着てみる。なんだかいい感じ。フレッドはその姿のまま、お母さんとお父さんがいる部屋へ行く。
【レビュー】
〈ストーリー〉
お母さんとお父さんの部屋に入ったフレッドは、鏡に映る裸の自身の姿を見て、服を着ることに興味を持つ。クローゼットに入り父の服を着てみるが、なんだかしっくりこない。続いて母の服を着てみると、満足することに気づく。
クローゼットという言葉は、性的指向を公表していない状態を表すメタファーで、この物語においては、クローゼットに入り、母親の服を着て外に出るため、性自認とカミングアウト、そして両親の受容が表現されていると解釈できる。
「女性的」な服を着たフレッドをみて、両親は笑顔で受け入れる。愛情に満ちた美しいシーンで、印象に残る。
〈絵と文〉
ピンクがアクセントカラーとなっている絵本で、鉢やレンガやクッションもピンクで描かれている。フレッドの自由な気持ちと両親の受容が示されているようだ。
文章は、擬音も多く、リズムもあって読みやすい。小さな読者でも理解できる表現、文の長さで、明瞭な内容で簡潔に書かれている。
また、よみ聞かせにも適していると思う。
〈キャラクター〉
タイトルは『ぼくのスカート』だけど、作中では一人称「ぼく」が用いられることはなく、全て語り手の名前である、「フレッド」が使われている。
原題は『Fred Gets Dressed』なので、翻訳したタイトルでジェンダー的な区分けの一つとなることがある、一人称「ぼく」をあえて用いた理由は、「フレッド」が男性名であることが、小さな読者には伝わりづらいことからだと思う。
しかし、生まれたときに割り当てられた性に対応してつけられた名前と、本人が自分の意志で使うはずの一人称では根本的に異なるため、タイトルに「ぼく」を用いたことで、残念ながらこの絵本のテーマがあいまいになってしまっている。
〈製本と出版〉
一般的な絵本より少し長い40ページの絵本。ただ特別長くも感じずに読める。文字は明朝体で大きく読みやすい。背景の絵と重なるページもあるが、読みづらい箇所はない。
【評点】
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