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【データ】
・作品名: にんぎょのルーシー
・作者: 文、絵/SOOSH、訳/高橋久美子
・出版社: トゥーヴァージンズ
・発売年月: 2020年6月
・出版形態: 紙の本
・ページ数(作品部分): 33ページ
・サイズ: 縦23.5cm × 横21cm
・絵と文の比率: おおよそ 7:3 1ページ当たりの文字数は100字ほど
・対象年齢: 小学校1年~
・カタカナの有無: あり
・漢字の有無: あり
・ルビの有無: 総ルビ
・分かち書きの有無: あり
・縦書き、横書き: 横書き
【作者】
SOOSHはヨーロッパ出身のイラストレーター。他に『パパといっしょ』がある。
【内容紹介】
海に住んでいる人魚のルーシーと、人間の女の子・エマ。友だちになったふたりは、一緒にたくさんの冒険に出かける。でもある日曜日の夜、大きな嵐がやってきて、ゴミというゴミが海をおおいつくした。翌朝、見つけたルーシーの体には、網が絡みついていた。
【レビュー】
〈作品の主題〉
人魚と人、住む場所も見た目も違うふたりが、仲良く過ごす、友情の絵本。地球環境の問題点もテーマに、それぞれの立場による違いと、重なり合う部分を描いている。
〈ストーリー〉
少女エマと人魚のルーシーの友情の物語。恋愛とも解釈できる。ふたりの様々な行動は、とても楽しそうだが、どことなく切なさがある。ふたりはそれぞれの違いを認識しながら、一緒に泳いだり、自転車に乗ったり、お茶会をしたりする。
特に素敵なシーンは、二人が釣り人の集まる海に潜り、こっそりと釣り糸に靴を引っかける箇所だ。ふたりのいたずらに読者も参加しているような心地で読める。
それぞれのふたりの行動を描くページでは、必ず、月曜日、火曜日と曜日が書かれている。人魚と遊ぶ日々という幻想的なシーンと、毎曜日の表現で感じる現実的な印象が対比され、不思議な魅力を感じる。
〈絵と文〉
絵は大変魅力的。エマとルーシーの仲睦まじい様子は、部屋に飾っておきたくなるほどのイラストで美しく洗練されている。
文章は自然で大変読みやすく、世界観に浸れるもので、美しい幻想的なイラストを補強している。一つ気になったのは、ふたりの女性的な役割語だ。描かれている友情の物語は、お互いに惹かれあう恋愛とも解釈できるが、そんなクィアな印象を、○○わよ、○○だわといった、過剰な役割語がせばめている感覚を持った。
〈キャラクター〉
序盤、人魚が大好きな変わり者のエマを、クラスの友達は、笑い、のけ者にする。その後、エマは人魚のルーシーと仲良くなるが、ルーシーが嵐の影響で網が絡みついて泳げなくなってしまう。エマはクラスのみんなに助けを求め、無事にルーシーは救われるが、ちょっとこの辺り描写が足りないというか、あまりに平和的すぎて、疑問に思った。
エマの必死の訴えにみんなの心が動いたのだろうが、結局多数派に助けを求め、みんなで協力して一件落着というのでは、それまでのふたりだけの友情が台無しになってしまうような印象を持ってしまった。
〈製本と出版〉
本のサイズは小さめ。文字の大きさはふつう。全ての文字は白背景に黒字で書かれており、大変読みやすい。
【評点】
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