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【データ】
・作品名: 給食室のいちにち
・作者: 文/大塚菜生、絵/イシヤマアズサ
・出版社: 少年写真新聞社
・発売年月: 2022年8月
・出版形態: 紙の本
・ページ数(作品部分): 37ページ
・サイズ: 縦26cm × 横22cm
・絵と文の比率: おおよそ 8:2 1ページ当たりの文字数は60字ほど
・対象年齢: 小学校2年~
・カタカナの有無: あり
・漢字の有無: あり
・ルビの有無: 総ルビ
・分かち書きの有無: なし
・縦書き、横書き: 横書き
【作者】
大塚菜生は、福岡県出身の作家。ほかに『弓を引く少年』『あんことそっぷ』がある。
イシヤマアズサは、大阪府在住の漫画家、イラストレーター。主な作品に、『ぼくらの一歩 30人31脚』『モツ焼きウォーズ』などで知られる。
【内容紹介】
給食を安全に作るため、学校に着いたらまずは体の調子をチェックして、白衣を着て、丁寧に手を洗う。食材の品質を確かめて、調理の打ち合わせ。調理員は、みんなで力を合わせて、450人分のカレーライスとサラダ、ゼリーを作り始める。
【レビュー】
〈作品の主題〉
小学校の給食室を舞台に、栄養士、調理員たちの8人で力を合わせて、450人分の給食を作る、一部始終を描いた作品。
安全でおいしい給食がどのような過程で教室まで届けられるかを、楽しく学べる絵本。
〈ストーリー〉
「給食室のいちにち」というよりかは、「栄養士と給食調理員の一日」といった感じの作品で、物語は栄養士の山川さんが朝起きたシーンから始まる。
給食作りを一緒に体験するような気持ちで読める作品で、学校では身近にいるけれど、直接様子が中々わからない、陰で働く人たちが魅力的に描かれている。
大きな鍋でたまねぎや牛肉を炒めている姿は、とても迫力があるし調理の過程を見るわくわく感がある。
調理員たちがテキパキと調理をするプロフェッショナルな姿には、読んでいてこの職業を目指したくなるような気持ちにもなるし、やりがいのあるような仕事の連続で印象に残る。
また、多くのページに時間が記されていて、給食員たちのタイムスケジュールを知る楽しさと、せわしなく働く大変な様子が伝わる。
また、給食を食べ終わって物語が終わるわけではなく、後片付けの様子もきちんと描かれていて、大事な表現だと思った。
〈絵と文〉
絵は漫画のようなコマ割りで描かれているが、左から右に読むため日本の漫画に慣れていると、少し違和感があったり、順番に苦労する読者がいるかもしれない。
また一部の吹き出しが、縦書きで書かれていて、そのシーンでは右から左に読むためちょっと読みづらい。セリフも横書きで統一したほうがよかったと思う。
舞台は10月で、調理員や子どもたちの服装も秋の雰囲気で統一されている。教室の背景にも採集した紅葉が飾られていたりしていて、丁寧に描かれている。なんなら献立に季節の食材もあったらよかったなと感じた。
文章は分かち書き無しで、漢字は総ふり仮名の絵本だが、ひらがなが多く少し読みづらい。作中使われている給食の「給」の字は小学校4年で習う漢字のため、ほかの字も基準を合わせて引き上げたほうが読みやすいはず。
〈キャラクター〉
栄養士と調理員がメインの物語で、聴覚にハンディキャップを持つ女性や、海外にルーツのある調理員二人を含む、老若男女8人のスタッフが働いている。
校長先生も女性だったり(小学校校長の女性の割合は23.4%)と多様で先進的な描き方に感じた。
キャラクターが紛らわしく混在しているような印象もなくて、説明的になりすぎずに登場人物に親しみを持ちながら読めるような様々な工夫があり、一人に注目しながら読み直しても面白く読める。
味見の様子をみて、すぐにそっぽを向く川村さんや、静かに淡々と仕事をこなしているようなロイさん、打ち合わせの時は耳が聞こえにくいために資料を受け取って読む矢野さんなど、みんながそれぞれ生き生きと働いている。
多くの子どもたちが描かれている教室のシーンでは、「いただきます」の合図の前に牛乳を飲もうとしてストローを差している男の子がいたりと、小さな発見があるイラストも楽しい。
また校長先生は左利きだったり、子どもたちの中にも何人か左手でスプーンをもった子が描かれていて、画一的でない描写がすてきに感じた。
ただ調理員のロイさんは、左手で箸を持っているが、ピーラーは右手で持っている。クロスドミナンス(用途により使い勝手のいい手が違うこと)なのかも。
〈製本と出版〉
絵本の大きさはふつう。文字の大きさは少し小さめ。作中の漢字は総振り仮名だが、表紙のタイトルには振り仮名がない。
【評点】
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