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【データ】
・作品名: まっくろいたちのレストラン
・作者: 作/島本理生、絵/平岡瞳、編/瀧井朝世
・出版社: 岩崎書店
・発売年月: 2020年5月
・出版形態: 紙の本と電子書籍
・ページ数(作品部分): 32ページ
・サイズ: 縦27.5cm × 横22cm
・絵と文の比率: おおよそ 9:1 1ページ当たりの文字数は70字ほど
・対象年齢: 5歳~
・カタカナの有無: あり
・漢字の有無: なし
・ルビの有無: ー
・分かち書きの有無: あり
・縦書き、横書き: 横書き
【作者】
島本理生は東京都出身の作家。ほかに『ファースト・ラブ』『ナラタージュ』など。
平岡瞳は愛知県出身のイラストレーター。主な作品に、『まいごのてがみ』『たのしいピクニック』などで知られる。
瀧井朝世は東京都出身のライター。主な本に『ぼくのポーポがこいをした』『あの人とあの本の話』など。
【内容紹介】
お母さんも、お父さんもいない、まっくろいたちには、キバがあった。「こんなキバだから、きっと親も怖がって逃げたんだ」と思うと、いたちはいつも悲しくなった。レストランを開くことにした、いたちだが、ある晩店に、谷の向こうからうさぎのお嬢様がやって来る。
【レビュー】
〈作品の主題〉
鋭く大きなキバがコンプレックスで、孤独を抱えるいたちが、店を開き、恋をして、自分らしく生きるまでを描いた作品。自分の容姿などが気に入らず、劣等感を持っている読者に、救いをもたらすような愛の物語。
〈ストーリー〉
いたちとうさぎの恋が描かれている作品だが、いたちがうさぎと初めて会った日、「そのばん いたちは ねむれませんでした」との文だけで、恋に落ちたことを表現している。
昨今の絵本は割と説明的なものが多く、ある意味子どもを見下しているように感じることもあるが、この絵本のような美しく巧みな表現で感情を伝える絵本がもっとあればいいのにと思う。
〈絵と文〉
舞台は冬、青を基調にした絵で、いたちのコンプレックスを抱えるもの悲しい雰囲気を表しているようだ。
また、うさぎは、冬の間だけ凍った川を渡って、いたちのレストランにやってくると話す。小さな会話から世界観が想像され、読んでいて楽しい。
その後、いたちとうさぎは恋に落ちるが、その恋模様と春の訪れが、色鮮やかな野ばらで表現されている。
冬から春へ移る舞台と世界設定、イタチの感情を表した背景の色あいとが相互的に展開していくのが非常に素晴らしく、一作の絵本として完成度が高い。
〈キャラクター〉
お城で暮らすお嬢様のうさぎには、婚約者の王子様がいるが、うさぎはいたちと共に暮らすことを選ぶ。恋をした男性のために身分や財産を捨て、いたちの元へ行くうさぎはステレオタイプな描写にも感じるが、最後の氷が解ける前に川を渡ってきた、といううさぎのセリフには心打たれる。
いたちは、うさぎを食べてしまうワシと戦うが、けがをしながらもキバを用いて勝つ。コンプレックスの大きなキバを武器として使うのは、ちょっと暴力的にも感じるし、自分の欠点(だと思い込んでるもの)を活用する展開はありがち。人と違うこととそれが受け入れられることは、別に何かを達成する必要はなく、ありののままで認められるべきだと思う。また、女性を守る強い男性像といったシーンで少し引っかかった。
〈製本と出版〉
文字の大きさはふつう。背景の絵と重なる箇所があるが、読みづらい箇所はない。
【評点】
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