素直に謝る勇気をもらえる絵本『ごめんねゆきのバス』

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【データ】
・作品名: ごめんねゆきのバス
・作者: 作/むらかみさおり
・出版社: 文溪堂
・発売年月: 2022年4月
・出版形態: 紙の本
・ページ数(作品部分): 32ページ
・サイズ: 縦23cm × 横22cm
・絵と文の比率: おおよそ 9:1 1ページ当たりの文字数は50字ほど
・対象年齢: 6歳~
・カタカナの有無: あり
・漢字の有無: なし
・ルビの有無: ー
・分かち書きの有無: あり
・縦書き、横書き: 横書き

【作者】
むらかみさおりは北海道生まれの絵本作家、イラストレーター。他に、『あめかっぱ』がある。

【内容紹介】
お姉ちゃんのぬいぐるみにジュースをこぼしてしまったため、お姉ちゃんを怒らせてしまっためぐちゃん。こまっていると足元に小さなドアが現れて、通り抜けると、そこには、大きなくまが運転手をしているバスがあった。
めぐちゃんが乗ると、友達の本を返し忘れていたねこの子や、お母さんとの約束をやぶってしまったリスの子たちが乗っていた。バスは、ねこの子が「ごめんね」を言わなければならない相手のところで止まった。

【レビュー】
〈作品の主題〉
一緒に乗る動物たちが謝る相手の元で降りていき、ついにめぐちゃんの番になる。なかなか謝ることができない、ごめんねの一言が言えない人を後押ししてくれる絵本で、温かみとファンタジーな魅力もある作品。
〈ストーリー〉
めぐちゃんがお姉ちゃんを怒らせてしまった理由は、遊んでいたぬいぐるみがコップにあたってしまい、ジュースをこぼしてしまったことが理由で、ミスであり悪意があったわけではない。
といってもひとこと謝る必要はあるだろうし、その言葉が言えないめぐちゃんの気持ちは多くの読者が手に取るように分かるだろう。素直に謝ることの難しさが丁寧に描かれていて、一歩踏み出すことの大切さを教えてくれる作品。

ストーリーは壁に現れた扉を抜けて、くまが運転するバスに乗るファンタジー的な展開だが、これは、謝りたいけど一歩踏み出せない語り手のめぐちゃん自身が生み出した想像とも読めるような工夫がされている。

例えば、めぐちゃんはぬいぐるみ遊びが好きで、現実世界には想像のヒントとなっているような小物も多く描かれている。クマやリスの人形だったり、ねこの子の家によく似た小さなおうちがタンスの上に置かれていたり、そばにはバスの走る森に似た絵が飾られていたりする。と言ってもこのような表現は絵本ではよくある。(『アパートのひとたち』『音楽をお月さまに』など)

また、ぬいぐるみの表情が時々で変化している。例えばリスがジュースがこぼれる瞬間に目を閉じていたり、おねえちゃんのキツネの人形がしょんぼりしていたりする。めぐちゃんの想像が絵に表れているようだ。
〈絵と文〉
絵は、背景にぬいぐるみや人形など小物が多く描かれていて、動物好きな姉妹の普段の様子が伝わるようで、ほほえましく読める。また、外には小さな動物たちがいたり、バスや家の階段にクマのマークがあったり、バスの座席がクマの足になっていたりと小さな発見が多く楽しく読める。

文章は丁寧に書かれていて、読みやすくまた、読み聞かせにも適していると思う。

〈キャラクター〉
バスの運転手であるクマは、謝ることに躊躇しているねこの子を、かついで家まで連れていく。無理やり謝らせているようなシーンでちょっと不穏に描かれているが、実際は、優しく「だいじょうぶ」と一声かけている。
そのクマのそっと寄り添い後押ししてくれる温かい言葉は頼もしく、読者の後押しにもなると思う。

〈製本と出版〉
少し小さめの正方形に近い絵本。
文字の大きさはふつう。文字が背景の絵と重なる箇所があるが、読みづらい部分はない。

【評点】


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