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・作品名: おとどけもの
・作者: 作/五味ヒロミ、絵/まえはら あきこ
・出版社: 潮出版社
・発売年月: 2021年12月
・出版形態: 紙の本
・ページ数(作品部分): 32ページ
・サイズ: 縦26.5cm × 横19cm
・絵と文の比率: おおよそ 9:1 1ページ当たりの文字数は40字ほど
・対象年齢: 5歳~
・カタカナの有無: あり
・漢字の有無: 無し
・ルビの有無: ー
・分かち書きの有無: あり
・縦書き、横書き: 横書き
【作者】
五味ヒロミは愛知県出身の絵本作家。他に、『ピンポーン!つぎとまります』『おいしいぱんぱんでんしゃ』などで知られる。
【内容紹介】
グーのお母さんが、ぶどうのジュースを作った。グーはおばあちゃんにジュースを届けるため、初めてひとりで出かけることにする。しかし途中でのどが渇き、全て飲んでしまった。
グーは空になったビンに様々なものを入れることを思いつく。それは“風”だったり、舞い落ちた葉っぱだったり、“ことりのうた”だったりする。
その後、グーはひとりどろだんごを作ることにするが、いつの間にか日が暮れてしまった。
【レビュー】
〈作品の主題〉
辺りが暗くなり不安になって泣き出すグーだったが、そこに現れたのはおばあちゃんだった。おばあちゃんはグーの母からひとりで来ると手紙を受け取っていた。
祖母、母親の行動は優しさ、思いやりに満ちていて、子どもの行動のほほえましさと小さな成長が描かれている絵本。
〈ストーリー〉
作中での説明はないがおそらくアライグマの物語。
“はじめてのおつかい”のような展開で、ちょっと既視感のあるストーリーに特別大きな起伏もないが、牧歌的で温かみがある。
序盤に手紙を届けている鳥の姿がさり気なく書かれていて、母親の優しさと、祖母が受け取った手紙の知らせの理由付けとなっている。
また、祖母はグーを見てぶどうジュースを飲んだことを見抜くが、祖母が気づいた理由も、始まりに描かれている母に口を拭いてもらうシーンと、ジュースを飲んでから赤く染まった口元の絵でそれとなく示されている。
シンプルな物語ながら展開に違和感がないよう整え、物語に奥行きを与える様々な工夫がされている。
作品で扱われる料理はぶどうジュースとかぶのスープで、ぶどうジュースは口元が赤く染まる理由が物語のキーとなるために選ばれたと思うが、どちらも絵本でメインに扱われることの少ない料理なため、型にはまらない新鮮さがある。
〈絵と文〉
絵は素朴で抒情的な物語に合った魅力がある。
親子の暮らす家には、子どもが描いたエプロン姿の母のイラストが貼られている。いかにも子どもが描いたといった具合で、その作られた雑さが少し引っかかるが、シングルマザーと思われる母と子の睦まじい暮らしが伝わる。
文はですます調で読みやすく、子どもが理解できる表現、文の長さが意識されているようで、また読み聞かせにも適していると思う。
〈キャラクター〉
グーは森の木陰で涼んだり、太陽の光で温められた小石を拾ったりする。自然を楽しむ様子が生き生きと表現されていて、その初めてのひとりの冒険を開放的に楽しむ様子に読んでてこちらも心が弾む。
空っぽのびんに風や歌を入れるなんて中々趣のある行動をするグーに、微笑ましい気持ちに加え聡明さを感じたが、一方でその後のどろだんごを作っている途中で日が暮れてしまう描写は、いたいけな子どもの姿が描かれていて、その子どもの両面性がうまく描かれているなと思った。
〈製本と出版〉
文字の大きさは少し小さめ。背景に合わせ黒、または白の字で書かれている。背景の絵と文字が重なり読みづらい箇所が一部にある。
【評点】
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