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【データ】
・作品名: バスにのるひ
・作者: 作/はせがわさとみ、絵/nakaban
・出版社: 絵本塾出版
・発売年月: 2021年11月
・出版形態: 紙の本
・ページ数(作品部分): 32ページ
・サイズ: 縦26.5cm × 横22cm
・絵と文の比率: おおよそ 9:1 1ページ当たりの文字数は50字ほど
・対象年齢: 5歳~
・カタカナの有無: あり
・漢字の有無: なし
・ルビの有無: ー
・分かち書きの有無: あり
・縦書き、横書き: 横書き
【作者】
はせがわさとみは、静岡県生まれの絵本作家。他に、『みんなおやすみ』『ホカリさんとなつのともだち』などで知られる。
nakabanは、広島市在住の画家。主な作品に、『ダーラナのひ』『ぼくとたいようのふね』がある。
【内容紹介】
山のきつねの子が人間の姿に化けて、目的のバス停までの数だけ木の実を持ち、人間の町に住むきつねのおじさんの家に行く。バスが止まるたびに、木の実を一つずつ食べていると、赤ちゃんの手がぶつかって、木の実が転がってしまった。
急にどきどきして、じわっと涙があふれそうになったきつねの子だったが、バスから初めて海を眺め、感銘を受けきつねの姿があらわになってしまう。
【レビュー】
〈作品の主題〉
姿があらわになって慌てたきつねの子だったが、バスの運転士もまた人に化けたきつねだった。親切な運転士に教えてもらい、無事にきつねの子はおじさんと会うことができた。
ひとりで遠出するときの不安感と、美しいものを初めて見たときの感動、見知らぬひとに助けてもらったときの安心感を描いた絵本。
〈ストーリー〉
きつねの子が人に化けてバスに乗り、おじさんの家を目指す様子は、きつねの子と一緒に人の世界にこっそりと忍び込むような、そわそわとする、ちょっと緊張感のある楽しさがある。
バスに入ってきた人の持っていた焼きたてのパンのいいにおいをかいで、きつねのひげが飛び出しそうになり慌てるきつねの子の姿は、かわいらしく、また後の展開のほのめかしとなる。
悪役のいない波乱な出来事の連鎖は、ひやひやする冒険の楽しみと、心温まる物語がうまく両立している。
物語はおじさんと会うシーンで終わる。おじさんの家に行き、海で遊ぶという楽しいイベントがのちに待っていると予想できるが、子にとってひとりでバスに乗り、目的地に着くことの焦燥と安堵こそが、とても印象に残る体験ということが一冊の絵本に表されている。『バスにのるひ』というタイトルもまた、そんな強烈な一日であると表現されているようだ。
〈絵と文〉
絵は、きつねが人に化け街に行くという物語に合ったもので、描かれている街並みも風景も幻想的な雰囲気がある。
また、序盤に描かれた俯瞰の絵を見て、バスの道順を辿っていく流れは、分かりやすさとワクワクするような冒険心が煽られるようで楽しく読める。
文は読みやすく、きつねの子の行動と、それによる心情の変化が丁寧に描かれていて、この物語の魅力である、じんわりと胸に伝わるような切なさがうまく表現されている。
〈キャラクター〉
感情の強い変化で元の姿があらわになってしまう、きつねの子の様子は、愛らしさと儚さが同居していて何とも言えないよさがある。
きつねの子はたったひとりのバスでの不安感で涙がこぼれそうになる。その後運転士の優しさに触れてまたしてもきつねの子の目はきらりと光る。涙の変化が印象的で美しい。
〈製本と出版〉
文字の大きさはふつう。背景の絵の色に合わせて黒、または白の字で書かれている。文字が背景の絵と重なり読みづらい箇所が多い。縁取りの文字にするとか、パネルのように絵を薄く加工するとかの調整をしてほしかった。
【評点】
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