変わらない良さと技術の発展による豊かな暮らし『300年まえから伝わる とびきりおいしいデザート』

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【データ】
・作品名: 300年まえから伝わる とびきりおいしいデザート
・作者: 文/エミリー・ジェンキンス、絵/ソフィー・ブラッコール、訳/横山和江
・出版社: あすなろ書房
・発売年月: 2016年5月
・出版形態: 紙の本
・ページ数(作品部分): 35ページ
・サイズ: 縦25cm × 横30cm
・絵と文の比率: おおよそ 7:3 1ページ当たりの文字数は200字ほど
・対象年齢: 小学校2年~
・カタカナの有無: あり
・漢字の有無: あり
・ルビの有無: 総ルビ
・分かち書きの有無: なし
・縦書き、横書き: 横書き
【作者】
エミリー・ジェンキンスはアメリカ生まれの絵本作家。他に『わたしのいえはごにんかぞく』がある。
ソフィー・ブラッコールはオーストラリア出身の絵本作家。他に『地球のことをおしえてあげる』がある。
横山和江は山形市在住の翻訳家。主な作品に『きみはたいせつ』、『ジュリアンはマーメイド』、『いえのなかといえのそとで』などがある。
【内容紹介】
ハンドミキサーをつかえば、すぐにできるホイップクリームも、1710年には、小えだを束ねたものを使って泡立てていた。おかあさんも、おばあちゃんも、そのまたおばあちゃんも食べていた、おいしいデザート「ブラックベリー・フール」の4世代の物語。

【レビュー】
〈作品の主題〉
ブラックベリー・フールというデザートの作り方を、時代の違う4世代にわたり、普遍的な部分と変遷した部分を描く。製作中にクリームをなめたり、後片付けでボウルからすくってなめるといったシーンが4度に渡り繰り返し描かれ、いつの時代も変わらないときめきがある。

一方、クリームは枝を束ねたもので泡立てていたが、ブリキの泡立て器、ハンドル付きの泡立て器、ハンドミキサーと移り変わっていく。変わらない良さと技術の発達における豊かな暮らしが楽しめる。

〈ストーリー〉
一世代目は、1700年代のイギリス、二世代目は、1800年代のアメリカ、続いて1900年代のアメリカ、そして最後に現代のアメリカが描かれている。

二世代目では奴隷の親子がデザートの製作をしているが、描き方が雑だ。不当な扱いを受け、自由がなく苦しい生活を余儀なくされていた黒人親子の暮らしを描くなら、ページの制約や絵本としての都合もあるかもしれないが、もう少し丁寧な説明が必要と感じた。

〈絵と文〉
繰り返しを用いた絵本は多々あるが、変わらないものと移り変わるものが描かれていて面白い。文章は読みやすく当時の様子がよく書かれている。晩御飯の献立の移り変わりも読んでいて楽しい。物語に引き込まれる。

絵は文と調和していて、また、小物までしっかり描かれていて想像が掻き立てられる。

〈キャラクター〉
前半三世代では全て母親と娘がブラックベリー・フール作りを担当しているが、現代では父と息子が担当している。家事労働を担当していた女性たちから移り変わった表現ではあるが、これらは少し物足りない。なぜならデザートを"提供"していた過去の女性たちに対し、現代では自慢のデザートを"振る舞う"ように描かれているからだ。この非対称性が気になる。
〈製本と出版〉
文字の大きさは小さめ。背景の絵と字が重なるページもあって時折読みづらいと感じる箇所がある。

【評点】


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