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【データ】
・作品名: アパートのひとたち
・作者: 作/エイナット・ツァルファティ、訳/青山南
・出版社: 光村教育図書
・発売年月: 2021年1月
・出版形態: 紙の本
・ページ数(作品部分): 37ページ
・サイズ: 28cm
・絵と文の比率: おおよそ 9:1 1ページ当たりの文字数は20字ほど
・対象年齢: 6歳~
・カタカナの有無: あり
・漢字の有無: あり
・ルビの有無: 総ルビ
・分かち書きの有無: あり
・縦書き、横書き: 横書き
【作者】
エイナット・ツァルファティはイスラエルの絵本作家、イラストレーター。他に『すなのおしろ』がある。
【内容紹介】
7階建てのアパートの7階に住んでいる“わたし”は、それぞれの階にどんな人が住んでいるか、想像しながら帰路につく。鍵の多い部屋に住んでいるのは、きっとどろぼうの家族で、車輪が立てかけられた部屋には、サーカスの家族が住んでいるはず……。そんな想像力が豊かな少女の物語。
【レビュー】
〈作品の主題〉
何気ない日常を想像力で楽しもうとする少女の物語。ドアを見てこの部屋にはハンターが住んでいる、吸血鬼が住んでいるはずだ、と空想しながら7階の自宅まで階段を登っていく。
一人で歩く退屈な帰り道でも、誰もが自由に開放的に考えることでとても楽しく過ごせることを伝えている。
〈ストーリー〉
想像上のにぎやかな住民とは違い、共に住んでいる両親は「すっごくふつう」だ。でも少女は両親のことが大好きだ。この幸福な対比が心あたたまる。
少女の部屋が描かれているページがあるが、そこには想像した「アパートのひとたち」に関連するグッズやおもちゃも飾られている。空想のヒントをここから得て楽しんでいたことが分かる。とても巧みな表現だと思う。
〈絵と文〉
たくさんの発見がある絵が見ていて楽しい。シンプルなドアを見るページと、そこから想像するにぎやかなページとが交互に書かれており、その緩急がとてもいい。読者も一緒になって想像を楽しめるし、日常の散歩や登下校にも応用できるだろう。
文章はとても読みやすく、主人公の少女に自然な親しみを感じられる優れた訳だと感じた。
〈キャラクター〉
主人公の少女の表情は豊かで、読んでて楽しい。他の人物もとても生き生きとしていて、少女の想像とともに心が弾む面白さがある。
ただ一つ気になったのは、ミュージシャンの家族がいると考えた部屋には、黒人ばかりが住んでいること。これは黒人はリズム感があり音楽が得意だといったステレオタイプな描写だ。他のページが全て黒人以外の人種で構成されているから余計に際立つ。
〈製本と出版〉
文字の大きさは少し小さめ。絵の上に黒もしくは白の字を載せる形式だが、読みづらいと感じる箇所はない。
分かち書きの絵本で、字数の少なさの割には使われている漢字に難しい字が多い。例えば、階、跡、鬼、賊などだ。総ルビとはいえ対象年齢がぐらついていると感じた。当サイトでは6歳~としたが、漢字を減らしたほうがこの作品が多くの読者に親しまれたと思う。
【評点】
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