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【データ】
・作品名: せかいのはてまでひろがるスカート
・作者: 作/ミョン・スジョン 訳/河鐘基、廣部尚子
・出版社: ライチブックス
・発売年月: 2021年4月
・出版形態: 紙の本と電子書籍
・ページ数(作品部分): 32ページ
・サイズ: 縦30cm x 横21.5cm
・絵と文の比率: おおよそ 9:1 1ページ当たりの文字数は50字ほど
・対象年齢: 6歳~
・カタカナの有無: あり("スカート"のみカタカナで他は全てひらがな)
・漢字の有無: なし
・ルビの有無: ―
・分かち書きの有無: あり
・縦書き、横書き: 横書き
【作者】
作者のミョン・スジョンは、韓国生まれの作家。他に『大きな、大きな』がある。
【内容紹介】
少女のスカートから始まる想像と世界をめぐる冒険を描いた物語絵本。
みつばちやカエル、てんとう虫やありなど様々な生き物などに「あなたのスカートは せかいのはてまでひろがるの?」と質問し、その回答を受け、少女が想像力を働かせ、せかいのはてまでひろがるスカートを描く物語。
【レビュー】
〈作品の主題〉
様々な生き物、そしてお月さまに「あなたのスカートは せかいのはてまでひろがるの?」と質問し、回答をもらう繰り返しの絵本。
少女が大きな想像力をもって自由にスカートを広げる物語は、女性の権利向上を思わせるもので、フェミニズムを主題にした絵本のようだ。
〈ストーリー〉
風景が少女の想像によって、そのままスカートになるのが読んでいてとても楽しい。
ミツバチ、カエル、花、てんとう虫、鳥、あり、フクロウ、トラ、アヒル、魚、月。多様な生き物(と月)が、花、蓮の葉、山、柳、サンゴ礁、山や海といった、個性的で魅力的な派手なスカートに例える表現は自由の象徴のよう。
主人公の少女のスカートは、そのものスカートだが、他の生き物たちの"スカート"はそうではない。例えばミツバチのそれは、大きな花で、トラのは山である。誰もが何かしらの"スカート"を持っていて、関連した想像のスカートを広げている。この表現は読者にも通じるし、豊かな想像力に救われた気持ちになる。
想像力に満ちた冒険をするこの絵本は、制服などで、女性だからと決めつけられて履かされるものでもあるスカートという衣服を、抑圧からの解放として、自由の象徴としての意味に塗り変えるような、多くの人の救いともなる優れた絵本だ。
〈絵と文〉
赤を基調に細かに描かれた絵の中には、世界中の物語(赤毛のアン、ハリーポッター、長くつ下のピッピや不思議の国のアリス、ムーラン、オズの魔法使いなど)をモチーフにした絵が小さく書かれており、探す楽しさがある。が、あまり一貫性はないし、せっかく世界をめぐるのだから国ごとに特徴を描いてもいいのでは、と思った。
同じ質問に対し、それぞれの生き物が多様な回答をしているが、決まりきった回答でないのがとてもいい。
〈キャラクター〉
主人公の少女の名前はヘリンのようだが、作中には書かれていない。ヘリンはシンプルな絵だが、読者が自分に当てはめられるようにあえてそうしているのだろう。そのため作中で名を明かさないのは理解できるが、なぜあとがきで明かしているのかは分からない。作者の他作品に登場するのか、身近な人物か。
世界中の物語をモチーフにした絵は可愛らしくて素敵だが、当然ながらあまりオリジナリティは感じられない。特にモアナはディズニーアニメのポスターをそのまま書き写しだ。
〈製本と出版〉
表紙の絵は作品内にも登場するトラとスカートに例えられた大きな山。とても素敵な絵で興味を引かれるが、作中に描かれている絵をそのまま表紙に利用するのは少し残念に思う。
文字は大きめ。全ての文字は白背景の上に赤文字で印刷されている。書体も全て同一。読みやすい。
文節ごとの分かち書きではないが、"スカート"の文字以外は全てひらがなの構成。
【評点】
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