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【データ】
・作品名: きょうりゅうレディ さいしょの女性古生物学者メアリー・アニング
・作者: 作/リンダ・スキアース、絵/マルタ・アルバレス・ミゲンス、訳/まえざわあきえ(前沢明枝)
・出版社: 出版ワークス
・発売年月: 2021年7月
・出版形態: 紙の本
・ページ数(作品部分): 35ページ
・サイズ: 縦26cm × 横26cm
・絵と文の比率: おおよそ 9:1 1ページ当たりの文字数は100字ほど
・対象年齢: 小学校1年~
・カタカナの有無: あり
・漢字の有無: あり
・ルビの有無: 部分的にルビ
・分かち書きの有無: なし
・縦書き、横書き: 横書き
【作者】
リンダ・スキアースは、アイオワ州在住の児童書作家。
マルタ・アルバレス・ミゲンスは、スペイン生まれのイラストレーター。他に『はみがきのおはなし』など。
まえざわあきえ(前沢明枝)は翻訳家。主な作品に『女王さまのワードローブ』『ぼくだってとべるんだ』がある。
【内容紹介】
200年ほど前のイギリスで、重要な化石を多く発見したメアリー・アニングの物語。
イクチオサウルスの全身骨格や翼竜の骨など様々な発見をしながらも、女性が地質学会に入れてもらえない時代ゆえ、化石のように歴史に埋もれてしまったメアリーの、優れた業績と人生をわかりやすいストーリーで描く伝記絵本。
【レビュー】
〈作品の主題〉
メアリーは様々な発見をし、その化石の数々は世界中の学者に広く知られるが、一方でメアリーの名前を口にするものはなく、またメアリーは地質学会にも入れてもらえず、大学で教えることも学ぶことも叶わなかった。その残酷ともいえる当時の性差別が丁寧に描かれている。
〈ストーリー〉
メアリーは家が貧しく、学校にも行けなかったが、独学で学者の書いた文章を書き写し、拾った化石を記録する。その努力の甲斐もあり、メアリーは素晴らしい発見を繰り返すが、学会に認められない。読んでいて少しやきもきもするが、現代にも残る性差別が描かれており、ジェンダーを伝える一冊目の絵本になると思う。
メアリーは化石の腰の骨の近くで見つかる、黒いかたまりの正体を突き止める。そのシーンで、“それはレディが声にだしていうようなものではありませんでした。”と、ちょっとジェンダーの絵本にしては雲行きの怪しい文が書かれる。しかし次のページで、メアリーが“これは、うんちの化石です”ときっぱりと学者に伝える描写は、女性が立体的に描かれておりとてもいいシーンだと感じた。
〈絵と文〉
絵は見やすくメアリーの表情は豊か。背景に描かれている200年前の小物も美しく描かれている。
文章は読みやすい。一方で、実在した女性を描いた絵本だが、セリフがほとんどない。伝記ものだが、もう少し会話や、メアリーのひとり言があった方が物語としての魅力が増したと思う。
〈キャラクター〉
好奇心旺盛なメアリーが未知の化石を求めて、ひるむことなく毎日危険ながけや海岸に行く様子はワクワクするし、メアリーの表情も生き生きとしていて読んでいて楽しい。恐竜や化石は男の子の趣味というステレオタイプもあるが、それを裏返しているようだ。
メアリーの年齢ははっきりと書かれず、中盤唐突に、29歳になったころ、とメアリーの年齢が明かされる。序盤にイクチオサウルスの全身骨格を発見したとき、メアリーは12歳であり、そのことを明記したほうがよかったのではないかと思う。
〈製本と出版〉
分かち書きが行われれていない絵本だが、分かち書きが必要に思えるほどひらがなが続き、読みづらい箇所がある。一方で、「腰」「墨」など小学校6年間で習わない漢字が使われている。
しかし、「地球じょう(上)」「世界じゅう(中)」など漢字とひらがなが組み合わされた言葉が書かれている。漢字の基準が曖昧で読みにくい。
また、総ルビの絵本ではなく、文中の一箇所「化石」のみルビが振られていない。理由はよくわからない。何度も登場した漢字だからか。誤植かとも思われる。
【評点】
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