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巧みな発想で何気ない日常から無限の旅へといざなう絵本は多くあります。空想の世界は退屈な一日を豊かで魅力的なものに変え、読者の孤独を救います。以下で紹介する10作品は、そんな想像力を刺激する優れた絵本です。
1.『さむがりやのスティーナ』
(平凡社)作/ラニヤマモト、訳/朱位昌併
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『さむがりやのスティーナ』は、冬の間は絶対に外に出ない、寒がり屋のスティーナの物語です。
スティーナは寒さをしのぐため様々な発明品を創作します。アイデアに富んでいてとても楽しめます。
スティーナの寒がりは人付き合いと解釈できます。孤立している、というよりかむしろ、“孤立を選んでいる”ような読者にとって、スティーナの孤独を楽しむ様子は共感できます。読んでいるだけで寒くなってくるような絵本ですが、スティーナある決断とその思いが、温かさを感じさせてくれます。
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2.『音楽をお月さまに』
(カクイチ研究所 ぷねうま舎)文/フィリップ・ステッド、絵/エリン・ステッド、訳/田中万里
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『音楽をお月さまに』は、ひとり静かにチェロを弾くのが好きなハリエットの物語です。親からの、将来は大きなオーケストラでチェロを弾くだろう、という期待が精神的な圧力となっています。
ハリエットは想像力を働かせることで、月と友だちになり、月のためにチェロを弾くことで自らを救います。ハリエットが現実に戻った時、彼女が小さな成長を(それが堂々と人前で演奏ができるというわけではなくても)していることが読者に想像できます。
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3.『たいくつなにちようび』
(理論社)作・絵/MICAO
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『たいくつなにちようび』は、ステッチさんが、日曜日の予定が中止になり、退屈になってしまった男の子を楽しませるため、刺繍で動物たちの愉快なサーカスを始める物語です。
退屈な日を豊かに変えるストーリーで、読者は自身の日常に当てはめて楽しめるはずです。サーカスを楽しむ物語ですが、起伏に富んだ展開で飽きずに読めます。
ステッチさんは、刺繍で生まれた動物たちを完璧に支配しているわけではなく、動物たちは自由に動いたり考えたりするため、様々なハプニングが起きます。それらを刺繍を利用して解決していく様が楽しく心が惹かれます。
また、刺繍をほどいて糸に戻して終わらせるシーンは、夢の世界との静かな別れのようで読後感も心地良いです。
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4.『おちばのねどこでおやすみなさい』
(ほるぷ出版)文/カレン・ジェイムソン、絵/マルク・ブタヴァン、訳/石津ちひろ
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『おちばのねどこでおやすみなさい』は、少女と飼い犬が森を探索しながら、出会う様々な動物たちの睡眠を想像する絵本です。
少女はノートをとりながら動物たちを観察します。それぞれの愛らしい生き物には、彼ら独自の睡眠に至るまでのルーティンがあり、少女は見かけた動物たちの寝ている姿を、子守唄のような詩とともに空想します。
自宅に戻りその日の思い出を様々な絵として描き、完成させる展開はとても魅力的です。
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5.『かんがえよう、コギト』
(カクイチ研究所 ぷねうま舎)文/アレクシス・ディーコン、絵/ヴィヴィアン・シュワルツ、訳/青山南
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『かんがえよう、コギト』は、生まれたばかりのひよこのコギトが、殻の中を探検しはじめるところから始まる物語です。コギトがまず見つけたのは、自分の足の指、つばさ、くちばしです。
コギトはわたしが世界で、世界がわたしだ、そう思ったけれど、でも、なにかがゴツンと頭に当たり、自分だけが、世界ではないと気づきます。
哲学的な絵本で、限られた範囲で頭を働かせ、工夫する楽しさ、探求から新しい発見が生まれる喜びが描かれています。
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6.『おばけと友だちになる方法』
(福音館書店)作/レベッカ・グリーン、訳/岸本佐知子
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『おばけと友だちになる方法』は、おばけと友だちになる方法を説明書の形態で描いたユーモラスな絵本です。
解説書風な部分と、物語としての魅力がいいあんばいで両立しています。「あなた」と呼びかけながら進む絵本で、おばけと生活する不思議な状況を、読者はまるで授業を受けるように楽しめます。
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7.『せかいのはてまでひろがるスカート』
(ライチブックス)、作/ミョン・スジョン、訳/河鐘基、廣部尚子
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『せかいのはてまでひろがるスカート』は、少女のスカートから始まる想像と世界をめぐる冒険を描いた絵本です。みつばちやカエル、てんとう虫やありなど様々な生き物などに「あなたのスカートは せかいのはてまでひろがるの?」と質問し、その回答を受け、少女が想像力を働かせ、せかいのはてまでひろがるスカートを描きます。
主人公の少女のスカートは、そのものスカートですが、他の生き物たちの"スカート"はそうではありません。例えばミツバチのそれは、大きな花で、トラのは山です。誰もが何かしらの"スカート"を持っていて、関連した想像のスカートを広げます。個性的で魅力的な派手なスカートに例える表現は自由の象徴のようで、豊かな想像力に救われた気持ちになります。
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8.『アパートのひとたち』
(光村教育図書)作/エイナット・ツァルファティ、訳/青山南
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『アパートのひとたち』は、何気ない日常を想像力で楽しもうとする少女の物語です。
7階建てのアパートの7階に住んでいる“わたし”は、それぞれの階にどんな人が住んでいるか、想像しながら帰路につきます。
ドアを見てこの部屋にはハンターが住んでいる、吸血鬼が住んでいるはずだ、と空想しながら7階の自宅まで階段を登っていきます。一人で歩く退屈な帰り道でも、誰もが自由に開放的に考えることで、とても楽しく過ごせることを伝えています。
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9.『すなのおしろ』
(光村教育図書)作/エイナット・ツァルファティ、訳/青山南
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『すなのおしろ』は、上記の『アパートのひとたち』と同じ作者による、これもまた想像力の無限の可能性を描いた絵本です。
海辺にやってきた“わたし”の作る砂のお城は、世界中の王族が訪れる場所です。また、海の見える大きな窓、アイスクリームを出してくれるダイニングホール、宴会場、温室、スケートボード用の階段、金庫室など見ているだけで楽しい様々な施設が描かれています。
孤独な砂遊びを想像で楽しむ様子をみて、読者は普段の生活でも、語り手のように頭を働かせ、退屈を華やかに変えてみようと思えるかもしれません。
日常の出来事を取り上げ、想像力を駆使して楽しむことの素晴らしさが描かれています。
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10.『迷子の魂』
(岩波書店)文/オルガ・トカルチュク、絵/ヨアンナ・コンセホ、訳/小椋彩
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『迷子の魂』は、忙しすぎて魂をなくしてしまった男、ヤンの物語です。ヤンはあるとき記憶を失ったため、賢い老医師を訪れます。医師の「魂が動くスピードは、身体よりもずっと遅いのです。あなたはじっくりじぶんの魂を待つべきです」という助言に従い、ヤンは「迷子の魂」をじっと待つことにします。
忙しく働きまわる人生から、いったん立ち止まり、じっと身を落ち着かせることで得られる幸福を教えてくれる絵本です。
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