「我思う、ゆえに我あり」探求と発見『かんがえよう、コギト』

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【データ】
・作品名: かんがえよう、コギト
・作者: 文/アレクシス・ディーコン、絵/ヴィヴィアン・シュワルツ、訳/青山南
・出版社: カクイチ研究所 ぷねうま舎
・発売年月: 2021年7月
・出版形態: 紙の本
・ページ数(作品部分): 38ページ
・サイズ: 縦29.5cm × 横25.5cm
・絵と文の比率: おおよそ 9:1 1ページ当たりの文字数は30字ほど
・対象年齢: 5歳~
・カタカナの有無: あり
・漢字の有無: あり
・ルビの有無: 総ルビ
・分かち書きの有無: あり
・縦書き、横書き: 横書き

【作者】
アレクシス・ディーコンはロンドン在住の絵本作家。主な作品に、『ぼくたちのいえはどこ?』『ともだちになって 』がある。
ヴィヴィアン・シュワルツロンドン在住の絵本作家、グラフィックノベル作家。他に、『はなおとこ』などで知られる。
青山南東京都在住の翻訳家。他に『そばにいるよ』『アパートのひとたち』『すなのおしろ』『あおいろペンギン』など多数。

【内容紹介】
コギトは目をさますと、さっそく探検をはじめる。みつけたのは、自分の足の指、つばさ、くちばし。コギトはわたしが世界で、世界がわたしだ、そう思った。でも、なにかがゴツン! わたしだけが、世界ではなかった!
自分と世界を思考し、“殻を破る”、コギトの想像と行動の物語。

【レビュー】
〈作品の主題〉
世界はあまりに広大で、多くの人々が生活していることは、意外と大人にも想像しづらいことだ。世界が可能性に溢れ、自分が今までほんのわずかなものしか知らなかったことを発見した時の高揚感を体験できる絵本。

未知の世界に立ち向かう勇気と、希望に満ちたコギトの行動は、入学前など、新しい環境に不安を覚えている読者を助ける絵本でもある。
〈ストーリー〉
井の中の蛙大海を知らず、の蛙は、狭い見識で知識に乏しいものとされるが、コギトは頭がよく、深く考えてから行動に移す。一見単純な絵本なのに、哲学的思考が表現されている。

当然、雛が殻を破るのは本能による行動だが、思考しているとみなし、その行動をユーモラスに表現した本作は、限られた範囲で頭を働かせ、工夫する楽しさ、探求から新しい発見が生まれる喜びが描かれている。

〈絵と文〉
絵は絵本の題材もあって非常にシンプル。想像力をかきたてる絵で、親しみやすい。コギトは表情豊かで読んでいて楽しい。文もその表情に合った、心が弾むようなリズミカルにも読める訳。読み聞かせにも適してると思う。

〈キャラクター〉
主人公の名前コギトはおそらく、ラテン語の「cogito」から来ていると思われる。「cogito」は自己意識という意味で、ある意味、哲学入門といったこの絵本を表している名前だ。

原題は『Ergo』。主人公の名前も「Ergo」だ。ラテン語で「Ergo」は、「それゆえに」を意味する言葉である。おそらくエッグともかけている。

デカルトの有名な言葉、「我思う、ゆえに我あり」は、ラテン語訳をすれば「Cogito ergo sum」である。どちらの主人公の名前もこの言葉が由来だろう。 
日本語訳でコギトに変えたのは、キャラクターに合わせた響きや語感か、ラテン語の意味合いか。どちらにせよ『かんがえよう、コギト』というタイトルは興味が惹かれるいい名前だと感じた。

〈製本と出版〉
基本的には小学校一年生以下の読者に向けて行われる、分かち書きがなされている絵本だが、中学校在学中レベルの漢字『脚』と『壁』が使われている。漢字があまり使われていない絵本なので、ひらがなとカタカナのみの構成でよかったと思う。

字は大きくて読みやすい。背景の絵と重なり読みづらいと感じる箇所が一部ある。フォントがいかにも翻訳絵本といった感じで、もう少し工夫した方がいいと思った。

【評点】


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