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【データ】
・作品名: すなのおしろ
・作者: 作/エイナット・ツァルファティ、訳/青山南
・出版社: 光村教育図書
・発売年月: 2021年6月
・出版形態: 紙の本
・ページ数(作品部分): 36ページ
・サイズ: 縦27.5cm × 横22cm
・絵と文の比率: おおよそ 9:1 1ページ当たりの文字数は50字ほど
・対象年齢: 6歳~
・カタカナの有無: あり
・漢字の有無: あり
・ルビの有無: 総ルビ
・分かち書きの有無: あり
・縦書き、横書き: 横書き
【作者】
エイナット・ツァルファティはイスラエルの絵本作家、イラストレーター。主な作品に『アパートのひとたち』がある。
【内容紹介】
海辺にやってきたわたしは、砂のお城を作った。でも、普通のお城じゃない。ドームも塔もある、本物のお城。世界中から王様やお妃様がやってきた。パーティーをみんなで楽しんだけど、料理もベッドも砂だらけって、みんなもうかんかん! 日常を豊かな想像力で楽しむ絵本。
【レビュー】
〈作品の主題〉
砂のお城での出来事は、語り手のわたしの空想であることは明らかで、語り手のわたしの、無限の想像力は読んでいてワクワクする。
孤独な砂遊びを想像で楽しむ様子をみて、読者は普段の生活でも、語り手のように頭を働かせ、退屈を華やかに変えてみようと思えるかもしれない。
日常の出来事を取り上げ、想像力を駆使して楽しむことの素晴らしさが描かれている。
〈ストーリー〉
語り手のわたしは砂のお城を作る。そのお城は壮大で素敵なもので、世界中の王族が訪れる。お城には、海の見える大きな窓、アイスクリームを出してくれるダイニングホール、宴会場、温室、スケートボード用の階段、金庫室など見ているだけで楽しい様々な施設がある。連想ゲームのような展開が読んでいてとても楽しい。
振る舞われている料理も非常に豪華だが、ほとんどがケーキなのも少女の空想を表しているようで微笑ましい。
〈絵と文〉
細かく丁寧に描かれていて、様々な発見があり、視覚的に探索する遊びができる。はらぺこあおむしや、タイタニックのジャックとローズもいる。どの登場人物たちの表情も豊かで喜怒哀楽が表現されている。
文章は読みやすく、リズミカルに読める。ただ、役割語の用い方が少し気になる。語り手のわたしのセリフは「〇〇よ」といった形で書かれることが多い。この絵本には不必要に感じる。自由な空想を繰り広げる語り手の人格を狭めているように思える。
〈キャラクター〉
物語の終盤で、砂のお城は波に流されてしまう。しかし語り手のわたしは「だから、つくりなおしよ」と特に悲しむこともなく、前向きに新しい想像(創造)をスタートさせる。そこで物語は終わるが、読者もストーリーを想像し拡大する余地があり、繰り返し読める魅力がある。
語り手の想像力、空想を楽しむ様子、気持ちを切り替え発展的に考える姿は、読んでいて憧れるような親しみを覚える。
〈製本と出版〉
文字は少し小さめ。背景の絵と重なり、読みづらいと感じる箇所が一部ある。
基本的に小学校一年生以下の読者に向けて行われる、分かち書きがなされている絵本。しかしながら使われている漢字に難しい字が多い。例えば、『妃』『宴』などだ。総ルビとはいえ対象年齢がぐらついていると感じた。当サイトでは6歳~としたが、漢字を減らしたり、ひらがな、カタカナのみで構成した方がこの作品が多くの読者に親しまれたと思う。
【評点】
【関連する絵本、リンク】
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