刺繍でできた動物たちのサーカス絵本『たいくつなにちようび』

書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします
【データ】
・作品名: たいくつなにちようび
・作者: 作、絵/MICAO
・出版社: 理論社
・発売年月: 2021年3月
・出版形態: 紙の本
・ページ数(作品部分): 32ページ
・サイズ: 21縦cm × 22横cm
・絵と文の比率: おおよそ 9:1 1ページ当たりの文字数は40字ほど
・対象年齢: 5歳~
・カタカナの有無: あり
・漢字の有無: なし
・ルビの有無: ー
・分かち書きの有無: あり
・縦書き、横書き: 横書き

【作者】
MICAOは兵庫県生まれの刺繍画家、絵本作家。刺繍、染色、アップリケなど、織物素材を用いて活動している。本作が初めての絵本。

【内容紹介】
遊びに行く約束をしていたはずの日曜日。中止になって、退屈になってしまった男の子の前に、ステッチさんが現れた。ステッチさんはシーツにチクチクと刺繍で大きなテントを作った。テントの中に入ると刺繍でできた動物たちの愉快なサーカスが始まった。 

【レビュー】
〈作品の主題〉
ステッチさんの作る刺繍はピエロや動物、怪獣など様々で、とても想像力が豊かで読んでいて楽しい。また、刺繍は非常に美しく美的感覚を発展させるものだ。

〈ストーリー〉
退屈な日を豊かに変えるストーリーは、自身の日常に当てはめ楽しめる。サーカスを楽しむ物語だが、起伏に富んだ展開で飽きずに読める。
ステッチさんは、刺繍されて生まれた動物たちを完璧に支配しているわけではない。動物たちは自由に動いたり考えたりするため、様々なハプニングが起きるが、それらを刺繍を利用して解決していく様が楽しく心が惹かれる。
また、ラストの刺繍をほどいて糸に戻して終わらせるシーンは、夢の世界との静かな別れのようで読後感も心地良い。

〈絵と文〉
立体的で美しい刺繍の絵は、他の絵本にない独特な魅力がある。絵の構図がうまく迫力がある。

文章はですます調で書かれており読みやすい。明瞭な内容で簡潔に書かれていて読み聞かせにも適してると思う。

〈キャラクター〉
登場人物たちはシンプルだが可愛らしく描かれている。刺繍で作られたピエロや動物たちも表情豊かで生き生きと描かれている。

ただ、視点が一定ではなく、読者が主人公と一体化できるかというと微妙。主人公の少年の情報が少ないし、描写はステッチさんがメインだ。だが読者は観衆の一人としてサーカスを楽しめる。

〈製本と出版〉
文字の大きさはふつう。文字が背景の絵と重なる箇所があるが、読みづらいと感じる部分はない。

タイトルからは想像できない作品の魅力がある。安易に「チクチクししゅうのサーカス」とかにしない辺りに、物語に没入でき、何が起きるのか想像がつかないワクワクとできる魅力がある。

表紙もものすごくシンプルだ。作中にあるような派手な刺繍をアピールしたほうが、この絵本を手に取る人が更に増えただろうから、少しもったいなくも感じてしまうが、タイトル同様、読者を楽しませるためにしているのだろう。作品を思い出深い物にするための優れた決断だと思う。

【評点】


【関連する絵本、リンク】