桜の木が開花するまでを写真で描いた作品『さくららら』

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【データ】
・作品名: さくららら
・作者: 文/升井純子、写真/小寺卓矢
・出版社: アリス館
・発売年月: 2021年3月
・出版形態: 紙の本
・ページ数(作品部分): 30ページ
・サイズ: 縦29cm
・絵と文の比率: おおよそ 9:1 1ページ当たりの文字数は40字ほど
・対象年齢: 6歳~
・カタカナの有無: なし
・漢字の有無: あり
・ルビの有無: 総ルビ
・分かち書きの有無: あり
・縦書き、横書き: 縦書き

【作者】
升井純子は北海道生まれの児童文学作家。他に『ドーナツの歩道橋』、『空をけっとばせ』など。
小寺卓矢は神奈川県生まれの写真家。他に『いろいろはっぱ』『だって春だもん』など。

【内容紹介】
4月の北海道。背は低いけどこれでも立派な桜です。まだちょっと、つぼみはかたい…。あれっ、あたまがじんじんしてきた。足がほかほかしてきた。あ、わたし、咲きました。
雪に埋もれる背の低い桜の木が、つぼみをつけ、開花するまでを写真を用いて描いた作品。

【レビュー】
〈作品の主題〉
背が低く成長の遅めな一本の桜の木が、見事に開花するまでを描く。美しい桜の木の成長過程が、写真を用いて表現されている。
桜の木を通して困難に打ち勝つ展開、目標の達成が描かれており、読者は桜の木を応援するような気持ちで楽しく読める。

〈ストーリー〉
桜の木は辺りの鳥や木や虫と会話する。かれらに開花を急かされながらも、桜の木はあくまで自分のペースで成長する。堂々と開花したのち、「わたしがさく日は わたしがきめる」と桜の木は言う。このセリフには大変勇気づけられるし、爽やかな読後感がある。

〈絵と文〉
写真は迫力があるページもあり、繊細さも感じる。自然の動植物が生き生きと撮られている。

擬音が多くリズミカルな文は、大変読みやすい。読み聞かせにも適してると思う。カタカナを用いない文章は柔らかく、作品の雰囲気を形作る表現に感じた。

〈キャラクター〉
語り手の桜の木は、開花したのち、「わたしがさく日は わたしがきめる」と言う。とてもいいセリフだと思うが、写真だとどうしても心情を決めつけてるように感じてしまう。自由な個人の考えを尊重するテーマのある絵本なのに、写真を用いているため、どうしても物語としての出来事ではなく、あくまでも想像による一方的な断定に思えてしまう。表現された桜の木の自由な意志と、心情の断定に矛盾を感じた。
個人的には写真よりも擬人化したイラストで表現したほうがこの文には合うと思った。

〈製本と出版〉
漢字の基準が少し曖昧。ほとんどがひらがなで構成されている絵本で、小学校1年生時に習う漢字や、漢字にした方が読みやすい字も、ひらがなで書かれている。しかしながら「春」と「雪」は、漢字で書かれている。全てひらがなにした方が、多くの子どもに広く読まれることになったと思う。
文字は大きく読みやすい。背景の絵と重なる箇所があるが、読みづらいと感じる部分はない。

【評点】


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