永遠に続くおばけとの友情。二人称で展開する作品『おばけと友だちになる方法』

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【データ】
・作品名: おばけと友だちになる方法
・作者: 作/レベッカ・グリーン、訳/岸本佐知子
・出版社: 福音館書店
・発売年月: 2021年9月
・出版形態: 紙の本
・ページ数(作品部分): 40ページ
・サイズ: 縦23.5cm x 横23.5cm
・絵と文の比率: おおよそ 8:2 1ページ当たりの文字数は60字ほど
・対象年齢: 小学校3年~
・カタカナの有無: あり
・漢字の有無: あり
・ルビの有無: 総ルビ
・分かち書きの有無: なし
・縦書き、横書き: 横書き

【作者】
レベッカ・グリーンはイラストレーター、画家。この絵本が初めての絵本。
岸本佐知子は翻訳家。絵本では、『ウサギ』『内なる町から来た話』『セミ』など。

【内容紹介】
おばけは、とってもかわいらしい生き物で、人間と同じように友だちをほしがっています。おばけと友だちになれば、最高の友情がずっとつづく……。おばけと友だちになる方法をたのしく紹介する絵本。

【レビュー】
〈作品の主題〉
おばけとの愉快な生活が様々に工夫されながら描かれている。可愛らしい絵でおばけを大真面目に解説する様子のちぐはぐさには、温かいユーモアが感じられる。よくある絵本らしいありがちなものでなく、指南書の形態で書かれており、固定観念にとらわれない独創性がある。
〈ストーリー〉
想像力を掻き立てられるこの解説書仕立ての絵本は、すぐに虚構の世界に引き込まれる良さがある。一方で、絵本の冒頭から描かれるおばけとの交流が、この作品の中心となる良さではあるが、それらは終盤まで変わらず、特にひねりや起伏がなく、展開の妙が見られない。つまり絵本の始まりで感じるインパクトを上回る魅力がない。

ただラストシーンの、主人公が亡くなることでおばけとなり、友達のおばけとの友情が永遠と続く描写は、大変優れていて読後感は心地よい。

〈絵と文〉
絵は可愛らしくて丁寧に描かれており、登場人物たち、おばけの表情は豊かで生き生きとしている。

描かれている季節は、秋もしくは冬で、オレンジ色が印象的に用いられる絵が多く、これらはハロウィンを想定したものだろう。おばけと出会い、一生を共にする流れの絵本なため、様々な季節やイベント、国や地域に行くような展開があればいいのにと思った。

文章はとても読みやすい。特に作中引用されるおばけを題材にした架空の詩は、リズミカルでとても素敵だ。
〈キャラクター〉
解説書風な部分と、物語としての魅力がいいあんばいで両立している。二人称で展開する絵本で(つまり「あなた」と呼びかけながら進む)おばけと生活する不思議な状況を、読者は授業を受けるように楽しめる。おばけの名前がないのは、その辺りの客観的な作品であることが理由だろう。

二人称の文章はしばしば実験的に用いられることが多く、大抵の場合読みづらいが、この絵本が特に違和感なく読めるのは、作品の工夫によるものだろう。

また、実在しない人物や本が作中に多く登場する。例えば、ニングェン・ダモーノ著「本当にいる! 生きた人間」や、詩人のバケリーノ・オッカナビッチ博士の言葉などで、それらの名前はひと目見て冗談だと分かるし、ユーモアと作品の世界観を押し上げる優れた表現だと思うが、このようなネタがあまり多く繰り返されるとちょっと冷める。作者の空想遊びについていけなくなると感じる瞬間がある。

〈製本と出版〉
フォントに癖があり少し読みづらい。ただ、漢字の使用の基準や諧謔から、それなりに成長した読者に向けて描かれた絵本だろうし、絵本の完成度を高め、作品の世界観を魅力的にするのもフォントの持つ力であるため、大きく問題があるわけではない。当サイトでの対象年齢は小学校3年~とした。

【評点】


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