みんなと見た目が違ってもよいと伝える絵本『あおいろペンギン』

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【データ】
・作品名: あおいろペンギン
・作者: 作/ペトル・ホラチェック、訳/青山南
・出版社: 化学同人
・発売年月: 2021年4月
・出版形態: 紙の本と電子書籍
・ページ数(作品部分): 30ページ
・サイズ: 縦28cm × 横25.5cm
・絵と文の比率: おおよそ 9:1 1ページ当たりの文字数は40字ほど
・対象年齢: 6歳~
・カタカナの有無: あり
・漢字の有無: あり
・ルビの有無: 総ルビ
・分かち書きの有無: あり
・縦書き、横書き: 横書き

【作者】
ペトル・ホラチェックはチェコ生まれの画家。他に『せかいでいちばんのばしょ』『こぐまのともだちはどこ?』がある。
青山南は福島県生まれの翻訳家、エッセイスト。他に『かんがえよう、コギト』『そばにいるよ』『アパートのひとたち』『すなのおしろ』など多数。

【内容紹介】
南極に、あおいろのペンギンが生まれた。あおいろのペンギンなんて、見たことない。あおいろペンギンは、他のペンギンがすることは全部できたけれど、他のペンギンたちは「わたしたちとは、いろがちがうね」と言って、離れていった。ひとりぼっちになったあおいろペンギンは、しろいクジラの歌を作る。
【レビュー】
〈作品の主題〉
見た目が異なるという理由で、ひとりぼっちにされてしまうあおいろペンギンだが、素敵な歌を披露することで、周囲に認められる。みんなと見た目が違っても、それは悪いことではないことではないことを伝えている絵本。

〈ストーリー〉
ちびのペンギンは、あおいろペンギンの歌に興味を持ち、少しずつ近づき、やがてふたりは友達となる。孤立している子に話かける最初の一人になる勇気の大事さを表現している。

あおいろペンギンはとても素敵な歌を作り周囲に感心され、彼がのけ者にされる問題は解決する。割とありがちなストーリーで、また、この描写は差別の解消には、才能とそれを披露する必要があるという誤ったメッセージに感じる。

周囲のペンギンたちが、あおいろペンギンとちびのペンギンの友情を見て、自分たちの考え方の間違いに気付いたから、あおいろペンギンを迎え入れるという解釈もしづらく、見た目の異なる人に対する、嫌悪感から始まる差別をなくす出発点となる絵本にはなれない。
〈絵と文〉
絵は美しい背景で、南極の寒さが伝わる。また、あおいろペンギンの感情を表す色合いで、もの悲しさと、その後の友情で温かく色づいていく過程が、上手く表現されている。

文章は読みやすく、特にペンギンのセリフが自然で、翻訳絵本によくある固さがなく親しみを持って読める。
〈キャラクター〉
見た目の違うあおいろペンギンは、他のペンギンと同じ南極生まれなので、人種というよりかは、アルビノ(アルビニズムの人々)などが連想される。ただ解釈によって様々なものに置き換えられる。
あおいろペンギンは南極で生まれたのに、親の存在が一切描かれていないのは、物語の都合が見えて残念。

あおいろペンギンは、ひとりぼっちの自分を助け出してくれる白いクジラの夢を見る。太陽にはうっすらクジラの絵が描かれており、あおいろペンギンが歌をうたうと、夢見ていた大きな白いクジラがやってくるが、あまり脈絡がない。ちょっと強引な展開で楽しめない。
〈製本と出版〉
ほとんどがひらがなで構成されており、かつ分かち書きが行われている絵本だが、『南極』という漢字が使われており、基準があいまいに感じられる。

文字の大きさはふつう。背景の絵と重なり、読みづらい箇所がある。

【評点】


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