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【データ】
・作品名: おばけのキルト
・作者: 文/リール・ネイソン、絵/バイロン・エッゲンシュワイラー、訳/石井睦美
・出版社: 光村教育図書
・発売年月: 2021年8月
・出版形態: 紙の本
・ページ数(作品部分): 41ページ
・サイズ: 縦28.5cm × 横21.5cm
・絵と文の比率: おおよそ 9:1 1ページ当たりの文字数は60字ほど
・対象年齢: 6歳~
・カタカナの有無: あり
・漢字の有無: あり
・ルビの有無: 総ルビ
・分かち書きの有無: あり
・縦書き、横書き: 横書き
【作者】
リール・ネイソンはカナダ出身の小説家、キルト作家。
バイロン・エッゲンシュワイラーはカナダ在住のイラストレーター。
石井睦美は作家、翻訳家。他に『王さまのお菓子』『じゅんばんなんてきにしない』など多数。
【内容紹介】
ある町に、小さなおばけがいて、みんなからキルトって呼ばれていた。
「ママもパパも友達もみんなシーツなのに、どうしてぼくだけちがうんだろう?」
キルトは、自分がパッチワークキルトなのがふしぎだった。みんなは空高く飛んだり、空中でくるくる回ったりできるけど、キルトにはできず、落ち込む毎日。そんなキルトは、あるハロウィンの夜、勇気を出して人間の家に近づく。
【レビュー】
〈作品の主題〉
おばけのキルトはみんなと少し違うことを理由にからかわれたり、笑われたりされるが、勇気を出して、みんなが恐れる冒険を成し遂げることで、他者に認められ、自分らしく生きることを学ぶ。この絵本はそんなコンプレックスになるような、それぞれが持つ特徴を、前向きに見つめ直すきっかけを与える。
〈ストーリー〉
キルトは、他のおばけと見た目が違うことや、上手く空を飛べないことを理由に、からかわれたり、妙なあだ名を付けられたりされ、大変落ち込む。これらは人種差別や障害者差別、容姿や運動能力に基づくいじめが連想される。
前半で提示されるそのような嫌な出来事は、キルトが、おばけのみんなが怖がる「人間」の家へ冒険に行ったことから、周囲に認められ解決する。
キルトは、みんなと違う自分を受け入れ、自分らしく生きることの大切さを知る。これらのメッセージはとても重要だが、物語としては割とありがち。あまり独創性は感じられない。
加えて人と違うこととそれが受け入れられることは、別に何かを達成する必要はなく、ありののままで認められるべきであり、そんなストーリー展開であってほしいと感じた。
〈絵と文〉
絵は基本的にモノクロ。パートカラーのように、主人公のキルトや一部の絵が色づけられていて印象的に描かれている。そのため全体的に薄暗いが、おばけのイラストは可愛らしく、不気味さは感じられない。文もまた穏やかに書かれていて、心優しい気持ちになれる。
〈キャラクター〉
キルトの考え方や、行動は自然体で等身大な魅力がある。
一つ気になったのは、途中、ハロウィンにおいて魔女のコスプレをした女性が、他人の家の柵に掛けられているキルトを家に持って帰ることで、物語が大きく動くが、だいぶ強引な展開だと思う。普通、他人の落とし物に見えるパッチワークキルトを、持ち帰ったりしないだろう。ほとんどどろぼうだ。
〈製本と出版〉
文字の大きさはふつう。黒または白の字で書かれている。背景の絵と重なり読みづらい箇所が多くある。
【評点】
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