ステレオタイプ、ジェンダーロールを取り払う絵本『ピンクはおとこのこのいろ』

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【データ】
・作品名: ピンクはおとこのこのいろ
・作者: 文/ロブ パールマン、絵/イダ カバン、訳/ロバート キャンベル
・出版社: KADOKAWA
・発売年月: 2021年11月
・出版形態: 紙の本
・ページ数(作品部分): 38ページ
・サイズ: 縦23.5cm × 横24.5cm
・絵と文の比率: おおよそ 9:1 1ページ当たりの文字数は20字ほど
・対象年齢: 4歳~
・カタカナの有無: あり
・漢字の有無: なし
・ルビの有無: ー
・分かち書きの有無: あり
・縦書き、横書き: 横書き
【作者】
ロブ パールマンはニュージャージー州在住の作家。
イダ カバンはトルコ生まれのイラストレーター。
ロバート キャンベルはニューヨーク市生まれ、日本在住の日本文学研究者。他に、『おつきさまこんばんは』『きんぎょがにげた』など多数。
【内容紹介】
ピンクは、おとこのこがすきだな。そして、おんなのこも。あおいろは、おんなのこがすきだな。そして、おとこのこも。
性役割(ジェンダーロール)を取り払う、だれでも自由に好きな色の服を着ていいと伝える絵本。
【レビュー】
〈作品の主題〉
ピンクは女の子、青は男の子といったステレオタイプは、今も強く残っており、本当はこっちの色が好きだけど、笑われたりしそうで選べないという窮屈な状況を経験している子どもは多いかもしれない。

この絵本は、そのようなステレオタイプなジェンダーの固定観念を打ち破り、押しつけがましくならず、説教臭くならずに、そっと優しく、楽しく明るく好きな道を選んでいいと表現している。
〈ストーリー〉
シンプルなテキストの繰り返しの絵本。ピンク、青、黄色、緑、赤、オレンジなどの色と、それにまつわる物や服などを楽しむ女の子と男の子が描かれている。

性別の固定観念を打ち破る先進性があるが、一方で気になる箇所は多い。
女の子はほとんどスカートで男の子は常にズボンを着ている。ピンクのドレスを着た男の子も描いてほしかった。ジェンダー・バイナリ(性別二元論)を強調する表現にも感じる。性別が男女二種類しかないことを前提で描かれているように思える。

色のステレオタイプに挑戦する絵本で、作品の価値も理解できるし、影響力もあるだろう。だからこそ、もっと丁寧な描写が必要だ。

〈絵と文〉
絵は登場人物みなが生き生きと躍動感をもって描かれている。背景の木々や動物たちも力強くまた可愛らしく描かれている。

文はシンプルな絵本だが読みやすく、そして読み聞かせにも適している。
〈キャラクター〉
人種は多様で、障害もった男の子、眼鏡を掛けたキャラも多くおり、この絵本の主題に基づき描かれているようだ。一方で、描かれている黒髪の男の子と女の子はアジア人と思われるが、二人とも切れ長のつり目で描かれている。ステレオタイプな描写で問題だ。この絵本にはなおのこと相応しくない。

〈製本と出版〉
文字の大きさは大きく読みやすい。背景の絵と重なる箇所があるが、特に読みづらい部分はない。


【評点】


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