フェミニズム、ジェンダー平等を描いた絵本『ちいさなフェミニスト宣言』

書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします
【データ】
・作品名: ちいさなフェミニスト宣言 女の子らしさ、男の子らしさのその先へ
・作者: 文/デルフィーヌ・ボーヴォワ、絵/クレール・カンテ、訳/新行内美和
・出版社: 現代書館
・発売年月: 2020年1月
・出版形態: 紙の本
・ページ数(作品部分): 46ページ
・サイズ: 縦24cm
・絵と文の比率: おおよそ 9:1 1ページ当たりの文字数は20字ほど
・対象年齢: 小学校2年~
・カタカナの有無: あり
・漢字の有無: あり
・ルビの有無: 総ルビ
・分かち書きの有無: なし
・縦書き、横書き: 横書き

【作者】
デルフィーヌ・ボーヴォワは、フランス在住の絵本作家。教員として子どもたちに関わる。
クレール・カンテは絵本作家、イラストレーター。ハサミと紙で独特な世界を描く。
新行内美和は翻訳者。十年ほどフランス在住し、現在は東京で日仏文化学術交流に関わる。

【内容紹介】
女の子は男の子は、女らしく男らしく……。そんなの誰が決めたの!?
「わたしはピンクがきらい」「からだが強いのはすごいけど、そうじゃない男の子もいる」ジェンダーのステレオタイプを取り払い、だれもが自分らしく生きられる社会のためのフェミニズムの絵本。

【レビュー】
〈作品の主題〉
女の子らしさ、男の子らしさをこえて、だれもが自分らしく生きられる社会の実現を目指す、フェミニズム、ジェンダー平等をテーマに描いた絵本。

学校や幼稚園、保育園、また絵本やアニメで知らず知らずに植え付けられてしまった価値観からの解放を明るく楽しく描いている。

フェミニズムの定義はそれぞれにあるだろうが、この絵本では全ての性差別に反対し、どの性別の子にも関わる問題でかつ、解決可能なものとして表現されている。

〈ストーリー〉
ストーリーらしいストーリーはない絵本ではあるが、登場する子どもたちは序盤の性差に対する疑問から少しずつ、自由な思いに変化し、最後にはみんなが認め合えば世界は変えられると主張する。読後感も心地よく、彼らの幸せそうな様子にはなんだか憧れる。

子どもたちにも「男らしさ」「女らしさ」の価値観が強くある。遊び、髪型、服装、言葉づかい……。特に絵本はそれらを強調することでキャラクターを際立たせることが多い。現実で使っている人がいないにもかかわらず、「〇〇よ、〇〇だわ」といった役割語で性を表す。この作品は、そんな凝り固まった文化に風穴を開けるものだ。

描かれている子どもたちは、いわゆる絵本っぽい場面――例えばドラゴンの出てくる世界や、杖をもった魔法使い、コウモリの飛ぶ古城から、自由で開放的にそれぞれの気持ちを主張する。読者は古い価値観から登場人物のように、明るく楽しく自由になりたいと願うはずだし、その行動、言動を模倣したくなるはずだ。

〈絵と文〉
絵は実写風の部分とイラストが組み合わさった独特なものだが、登場人物それぞれが生き生きとしていて、読んでいて楽しい。

子どもたちの主張は説明的にならずに親しみやすく分かりやすく飽きずに読めるように書かれている。

〈キャラクター〉
登場人物の表情は大変豊かで魅力的。マイノリティ性を持つ人物の描写が主体性を持ち現実的に描かれているが、一方でアジア人が少ない。(おそらく一人だけ)フランスで描かれた絵本だが、ジェンダーだけではなく人種においても平等の概念を用いて描いていればもっといいと思った。

〈製本と出版〉
漢字の基準が曖昧。基本的にはひらがなを多めに構成している絵本で、漢字で書いたほうが読みやすい字もひらがなにしている箇所が多いが、「優秀」という字は漢字で書かれている。秀の字は小学校6年間で習わない字であるため、統一感がないと思う。

字の大きさはふつう、背景の絵と重なっているページがあるが特に読みにくいと感じる箇所はない。

フォントは全てゴシック体。いかにも翻訳絵本といった感じでもう少し工夫すればいいのにと感じた。

【評点】


【関連する絵本、コラム】