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【データ】
・作品名: ぼくのポーポがこいをした
・作者: 作/村田沙耶香、絵/米増由香、編/瀧井朝世
・出版社: 岩崎書店
・発売年月: 2020年4月
・出版形態: 紙の本
・ページ数(作品部分): 32ページ
・サイズ: 縦27.5cm × 横22cm
・絵と文の比率: おおよそ 9:1 1ページ当たりの文字数は50字ほど
・対象年齢: 5歳~
・カタカナの有無: あり
・漢字の有無: なし
・ルビの有無: ー
・分かち書きの有無: あり
・縦書き、横書き: 横書き
【作者】
村田沙耶香は千葉県出身の作家。主な作品に、『コンビニ人間』『地球星人』がある。
米増由香は大阪府出身のイラストレーター。挿絵や装画を手掛けている。
瀧井朝世は東京都出身のライター。主な本に『まっくろいたちのレストラン』『あの人とあの本の話』など。
【内容紹介】
日曜日、僕のおばあちゃんが、僕のぬいぐるみポーポと結婚する。ポーポは僕の親友だったのに、もう僕とは遊んでくれない。変だと思うけど、ミカお母さん、ユカお母さんは結婚に大賛成で、準備はどんどん進んでいく。
【レビュー】
〈作品の主題〉
語り手のぼくは、ぬいぐるみのポーポとおばあちゃんの恋に対して疑問を持ち、感情を露わにするが、おばあちゃんとポーポの結婚式での誓いのキスを見て、感情に変化が現れる。少年が信じられないことを受け入れるまでを描いた作品。
〈ストーリー〉
語り手のぼくは、親友だったぬいぐるみとの時間を奪われてしまい、読んでいて少しかわいそうだが、タイトルが「おばあちゃんがぬいぐるみにこいをした」ではなく「ぼくのポーポがこいをした」というぬいぐるみの感情に視点をおいて、“恋をした”と断定しているのは、ぼくが結婚を受け入れる決意が決まり、ポーポの感情を解釈している、作中最も未来の立場であり、おばあちゃんとポーポの結婚を祝福していることを表している。
おばあちゃんはポーポとの結婚式で真っ黒なドレスで入場する。これは、ウェディングドレスは白であるべきだという風習と、前代未聞のぬいぐるみとの結婚とを合わせているのだろう。
また、おばあちゃんとポーポが誓いのキスをした時、炎みたいに真っ黒が広がる。これもまた、普通なら悪の前兆のようだがこの物語では祝福だ。それを見て拍手をする少年の姿は、成長と価値観の変化の現れに思える。
解釈が多様にできる作品だが、とっつきにくさはなく、繰り返し読むことでそれぞれの理解が深まる魅力がある。
〈絵と文〉
絵は幻想的で独特な美しさと不思議な安心感がある。少年の感じる不安感やおばあちゃんの華やかな感情を反映しているのも魅力的。
文章は読みやすくそれぞれにリズムがある。特に少年がおばあちゃんとポーポのキスを目撃した際の“ふたりは よぞらに おちてしまいそうだった”という文は大変美しく印象に残る。
〈キャラクター〉
少年には二人の母親がいる。作中、同性カップルの二人の母が、当たり前に存在しており、おばあちゃんとぬいぐるみの結婚に反対している少年も、特に疑問も持たず言及もしない。対比するように描かれており、古い価値観の打破が描かれている。
〈製本と出版〉
文字の大きさは小さめ。背景の色に重ならないように、文字に合わせて色を差し込む処理がされているため読みやすい。
【評点】
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