愛するものを亡くす喪失を描いた作品『わたしのバイソン』

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【データ】
・作品名: わたしのバイソン
・作者: 作/ガヤ・ヴィズニウスキ、訳/清岡秀哉
・出版社: 偕成社
・発売年月: 2021年10月
・出版形態: 紙の本
・ページ数(作品部分): 31ページ
・サイズ: 縦27.5cm x 横20cm
・絵と文の比率: おおよそ 7:3 1ページ当たりの文字数は50字ほど
・対象年齢: 小学校1年~
・カタカナの有無: あり
・漢字の有無: なし
・ルビの有無: ー
・分かち書きの有無: あり
・縦書き、横書き: 横書き

【作者】
ガヤ・ヴィズニウスキはベルギー生まれ、フランス在住の作家。
清岡秀哉は東京生まれ。本作が初めての翻訳書。
【内容紹介】
少女がバイソンに出会ったのは4歳の春の日。それから毎日バイソンに会いに出かけた。バイソンは、他のバイソンたちの場所に帰っても、雪が降る頃に、また戻ってきてくれた。長い時間をともに重ねていくが、ある冬の雪の日、バイソンは現れなかった。喪失と優しさを描いた絵本。

【レビュー】
〈作品の主題〉
少女がバイソンと生涯を共にし、そして別れるまでを描いている。それらは心優しい読者を想定したもので、共感性などを発展させるものだ。バイソンとの友情(恋愛)は、あらゆるマイノリティ性と結び付けられるし、価値観からの解放を感じられる。
〈ストーリー〉
危険な生き物との空想的で情緒的な友情(恋愛)物語は、絵本においてよく見かけるテーマの一つだ。例えばそれはクマだったり、ライオンだったり、ドラゴンやおばけでもある。この絵本はそれらのものと大きな違いはなく、似通ったもので、残念ながら月並みな展開に感じる。

愛するものを亡くす喪失を描いた作品でもあるが、失った大切な存在から、心の中に、あらゆる自然にわたしはいる、と呼びかけられるラストシーンはとてもありがちで、特に驚きや感動はない。

〈絵と文〉
少女の心情を表した絵で、黒と青をメインに暗めに描かれている。一見ホラーを連想させるような絵柄だが、心優しい展開と文章がうまく合わさっていて、物語展開はいまいちだが、絵と文章の完成度は高い。

〈キャラクター〉
作中繰り返し用いられる『わたしの バイソン』という本のタイトルでもある言葉だが、なんだかバイソンが語り手の所有物のようで、対等な友情関係に見られないのは少し残念だ。加えてバイソンになにか名前があればいいのにと思った。
〈製本と出版〉
文字の大きさはふつう。全て黒の字で書かれている。背景の絵と重なり読みづらいと感じる箇所が一部ある。

漢字なしの絵本で、文節ごとの分かち書きがなされている絵本。そのため当サイトの対象年齢は、小学校1年~とした。低学年の子には少し難解な物語かもしれないが、丁寧に絵をよく見る読者なら問題ないだろう。

【評点】


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