動物の福祉と読書の楽しさを伝える保護猫の絵本『へそまがりねこマックス』

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【データ】
・作品名: へそまがりねこマックス
・作者: 光村教育図書
・出版社: 作/ソフィー・ブラッコール、訳/石津ちひろ
・発売年月: 2022年2月
・出版形態: 紙の本
・ページ数(作品部分): 31ページ
・サイズ: 縦26.5cm × 横20.5cm
・絵と文の比率: おおよそ 8:2 1ページ当たりの文字数は60字ほど
・対象年齢: 5歳~
・カタカナの有無: あり
・漢字の有無: なし
・ルビの有無: ー
・分かち書きの有無: あり
・縦書き、横書き: 横書き

【作者】
ソフィー・ブラッコールはオーストラリア出身の絵本作家。他に『300年まえから伝わるとびきりおいしいデザート』『ぺろぺろキャンディー』などで知られる。
石津ちひろは愛媛県生まれの絵本作家、翻訳家。主な作品に、『おちばのねどこでおやすみなさい』『きょうものはらで』『マイロのスケッチブック』など多数。

【内容紹介】
“ぼく”が「ねこがかいたい」と、ねだりつづけて、427日目。とうとう許してくれた。でも、保護猫シェルターから引き取ったマックスは、何をやってもちっとも喜ばない「へそまがり」。家族のみんながマックスにあきれている。そんなある日、本を読み始めた“ぼく”のそばにマックスがすり寄ってきた。
【レビュー】
〈作品の主題〉
“ぼく”はマックスとともに苦手だった読書を終える。それを見かけた保護猫シェルターの人に誘われ、“ぼく”は毎週シェルターに通い、猫に本の読み聞かせをすることになる。
音読が苦手な子にも適した絵本で、動物の福祉と読書の楽しさを伝えている絵本。

〈ストーリー〉
猫を飼いたいと願うところから始まる物語で、語り手の“ぼく”は保護猫シェルターに行き猫を受け取りに行く。オーストラリアなど多くの国にはペットショップはほとんどなく、ブリーダーや保護施設から譲り受けてもらうのが一般的とはいえ、実際に保護猫を譲ってもらう描写なのはよかったと思う。

猫のマックスは、へそ曲がりな猫と言われるが、そんなわがままという訳でもなく、動物にとって割と自然な行動をしている。例えば、ラグに毛玉をはいたり、玄関にうんちをしたり、花びらを食べたりする。それらのマックスの行動に対して、家族はイライラし、不満をあらわにする。

のどをゴロゴロ鳴らさないとイラつく父や、犬を飼うべきだったと言う姉や、シェルターに連絡する(猫をシェルターに送り返そうとしてる)母の姿は残酷で嫌な目つきで描かれている。読んでいて猫のマックスがこんな家に連れられてかわいそうとしか思えない表現で不快感を持った。
また、思い通りにしないマックスの行動を“お返し”と表現しているのも引っかかる。
語り手の“ぼく”がシェルターに通い、猫に本の読み聞かせをすることになる結末は素敵だが、マックスの住む家の環境が改善されている訳ではない。
動物が家の一員として共に過ごすためには、新しい環境に慣れるための時間が必要という大事な要素がこの絵本には欠けている。

〈絵と文〉
漫画的な吹き出しも活用された絵は読みやすくとっつきやすい。人物は表情豊かで子どもたちはみな生き生きと描かれている。

文章は語り手の“ぼく”の気持ちがうまく乗ったもので読みやすい。翻訳的な違和感もなく自然で親しみやすい。
〈キャラクター〉
語り手の“ぼく”に対して家族は、“おまえ”や“あんた”と呼ぶ。読者が投影できるようにする意図があったのかもしれないが、きつい表現に感じるので、何か適当な名前を付けたほうがよかったと思う。

姉の目つきは常に悪く、いつも怒っているようだ。最後まで笑顔を見せることもなく、犬を飼うべきだっただのノミなんか絶対なしなどと言う。
また、“あんたの ねこ”という表現で猫を非難する。同じ家の一員として共に過ごす考えがないというか、ちょっとひどい人物に表現され過ぎていて性差別的な描かれ方にも思えてしまった。

〈製本と出版〉
文字の大きさはふつう。背景の絵の色に合わせて黒または白の字で書かれている。読みづらい箇所はない。

【評点】


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