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【データ】
・作品名: ここは ねこの まち さがりめのニャン!
・作者: 文/うえのよし(上野与志)、絵/くさかみなこ
・出版社: 絵本塾出版
・発売年月: 2021年8月
・出版形態: 紙の本
・ページ数(作品部分): 32ページ
・サイズ: 縦24cm × 横19cm
・絵と文の比率: おおよそ 8:2 1ページ当たりの文字数は100字ほど
・対象年齢: 5歳~
・カタカナの有無: あり
・漢字の有無: なし
・ルビの有無: ー
・分かち書きの有無: あり
・縦書き、横書き: 横書き
【作者】
うえのよし(上野与志)は東京都生まれの絵本作家、童話作家。他に『ともだち?』『わんぱくだんのりゅうぐうじょう』などで知られる。
くさかみなこは宮崎県生まれの絵本作家。他に、『ちんあなごのちんちんでんしゃ』など多数。
【内容紹介】
猫には珍しい下がり目だから「さがりめ」って呼ばれている“おいら”。ある日、街のボス、ジロチョーさんに、「あす、となり街のボス、シゲゾーがこの街をうばいとりにやってくる。力を貸してくんな」と頼まれる。
ねこのまち同士の戦いがはじまる!
【レビュー】
〈作品の主題〉
ねこのまち同士の戦いは白熱するが、この戦いを静めたのは、語り手のさがりめのおいらだった。その容姿をみんなに笑われることで戦いは収まる。
笑われるのはいいことだ、そして笑って暮らせば世界は平和だということを伝える絵本。
〈ストーリー〉
さがりめのおいらが密かに思いを寄せるリリィちゃんは、「ねこのまち」で一番かわいい猫と紹介される。猫同士の戦いが、自らの容姿を笑われることで解決したため、さがりめのおいらは、リリィちゃんに認められ「好きよ」の印である、“頭をゴッツン”してもらう。
この展開は性差別的に思える。リリィちゃんに主体性がなく、物語において成功した者へのトロフィーとして表現されている。
また、見た目を笑われることで、「笑って暮らせば世界は平和だ」なんてメッセージを描くのはいじめを助長しているようにも感じる。
ジェンダーロールを肯定し、容姿を嘲笑する物語であり、正直ストーリー展開に良い部分が見当たらない。
〈絵と文〉
様々な猫が登場するが、色や表情もまた特徴があり、読んでいて飽きさせない工夫が見られる。また、背景も猫の街に特化したイラストが多くあり、猫の滑り台やら猫のバスやらが描かれていて楽しく読める。
文は口語的で読みやすく親しみやすい。読み聞かせにも適していると思う。
〈キャラクター〉
さがりめのおいらに加え、美しいリリィちゃん、街のボス、ジロチョーや、隣町のボス、シゲゾー、その用心棒のサスライさんなど特徴的なキャラクターが登場する。
短い絵本の割にキャラが多いが、雑多にならずそれぞれの存在が際立っている。それだけにリリィちゃんが、ステレオタイプな、みんなの憧れの女子として描かれているのが非常に残念。
〈製本と出版〉
漢字なしでひらがなとカタカナのみで構成されている絵本。分かち書きが行われているため想定されている読者は小学校入学前から1年生だろう。当サイトでは5歳~とした。
一方、背景に書かれた文字には漢字が使用されており、かつ振り仮名がない。例えば街のマーケットに書かれた「大安売り」や寺に掛けられた「猫舎寺」の看板などだ。絵本の世界観を魅力的にする背景でもあるので、特に問題ではないが、対象年齢を考えるとアンバランスにも感じる。
【評点】
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