Tweet
|
【データ】
・作品名: つきのばんにん
・作者: 作/ゾシエンカ、訳/あべ弘士
・出版社: 小学館
・発売年月: 2021年9月
・出版形態: 紙の本と電子書籍
・ページ数(作品部分): 32ページ
・サイズ: 縦26.5cm × 横22cm
・絵と文の比率: おおよそ 9:1 1ページ当たりの文字数は30字ほど
・対象年齢: 5歳~
・カタカナの有無: あり
・漢字の有無: なし
・ルビの有無: ー
・分かち書きの有無: あり
・縦書き、横書き: 横書き
【作者】
ゾシエンカは南アフリカ、ポーランド、英国で育った絵本作家。グラフィックデザイナー。他に『Baby Bird』がある。
あべ弘士は、北海道出身の絵本作家。他に『オサム』など多数。
【内容紹介】
あたらしい「つきのばんにん」に選ばれたシロクマのエミール。夜の動物たちにとってなくてはならない月の光を守るため、毎晩欠かさず、月のお世話をする。ところがある晩、エミールは丸い月の形が、少し欠けていることに気がつく。
【レビュー】
〈作品の主題〉
月の番人となったエミールだが、月が欠け始め不安になる。お隣さんに聞いたり、友人のヒョウに電話して相談したりするが、どうすることもできず解決できない。
そんな困り果てた、エミールに対し友人の鳥が、「ものごとは大きくなったり、小さくなったり、消えたと思ったら現れたりするものだ」と伝える。このメッセージがこの絵本の主題となるもので、心をゆったりと保ち、あまり不安がらずに生きることを勧めている。
〈ストーリー〉
月の番人に選ばれたエミールはその職を誇らしく思う。その準備のため様々な道具をかばんに詰め込む。それらの道具の中には、虫あみや、ペンチ、ろうそくなどと何に使うか分からない道具があり、読んでいてとてもわくわくするものだが、最後まで活用されないものが多い。なんだか期待だけ煽られて肩透かしにあった気分だ。
なお、本作で描かれている月の満ち欠けは、南半球から見える流れである。つまり、左上から欠け始めて細くなっていき、見えなくなった後、左下から太くなっていく。これは作者の出身が南アフリカであることもあるだろうが、初めはイギリスで出版された絵本のため、常に北半球前提で描かれがちな文化に一石を投じるものという、ポストコロニアリズム(植民地支配されていた頃の負の遺産をその地域の立場から捉え直す考え方)な解釈もできる。
〈絵と文〉
絵は、主人公のシロクマのエミールを始め、動物たちが微笑ましく描かれている。月のために雲を追い払ったり、コウモリが月を横切るのを注意したりするエミールの姿は特に愛らしい。
文章は読みやすく、幻想的な絵本の持つ雰囲気に合うもので、魅力的。
〈キャラクター〉
月の番人の重責を感じていたせいか、エミールは月が欠け始めると大変不安な心持ちになる。読者には杞憂だと分かるが、そのそわそわした感情は多くの人に経験があるだろうし響くと思う。
その後友人の鳥から伝えられる、ものごとは大きくなったり、小さくなったり、消えたと思ったら現れたりするものだという言葉は、多少説教臭く説明的ではあるが、落ち着いて焦らずにのんびり行こうという温かいメッセージで、救われる。
〈製本と出版〉
文字の大きさは少し小さめ。黒または白の字で書かれている。
背景の絵との重なり一部読みづらいと感じる箇所がある。
【評点】
【関連する絵本、コラム】
Tweet