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【データ】
・作品名: オサム
・作者: 文/谷川俊太郎、絵/あべ弘士
・出版社: 童話屋
・発売年月: 2021年3月
・出版形態: 紙の本
・ページ数(作品部分): 31ページ
・サイズ: 縦21cm × 横22cm
・絵と文の比率: おおよそ 9:1 1ページ当たりの文字数は20字ほど
・対象年齢: 6歳~
・カタカナの有無: あり
・漢字の有無: あり
・ルビの有無: 総ルビ
・分かち書きの有無: なし
・縦書き、横書き: 横書き
【作者】
谷川俊太郎は詩人、絵本作家。多くの絵本を執筆しており翻訳も多い。
あべ弘士は、北海道出身の絵本作家。他に『つきのばんにん』など多数。
【内容紹介】
オサムはいばらない。オサムが夜、みんなの布団をしいている。オサムが寝る前に二人の子どもに絵本を読んでいる。誰もがいい人だと言うが、オサムは自分がいい人だとは思っていない……。ゴリラのオサムは今日もつつましく日常をすごす。
【レビュー】
〈作品の主題〉
いい人とはどんな人なのか、ゴリラのオサムがおしえてくれる絵本。他の生き物とともに生き、いばらず、子に優しく、死者を尊重し、つつましく生きる。
これらがこの絵本で提示される「いい人」の見本だ。心優しいオサムの生き様をみて読者はいい影響を受けるかもしれない。
〈ストーリー〉
「いい人」エピソードにゴリラのイラストが隣り合う、非常にシンプルな絵本。ただストーリーには価値観の押し付けが見受けられる。
のんびりと無口でつつましく生きるゴリラのオサムは一見、優しく「いい人」だが、このような強く落ち着いた生活ができるのは限られた人のみだ。優位性があるからできる行動を賛美しているようにしか見えないのは引っかかる。
〈絵と文〉
文章はとても読みやすい。読み聞かせにも適している。しかし、世界観にはあまり興味深いところはない。
文も絵も内容もとても優しく理想的な暮らしが描かれており、一見すると教育的価値がありそうだが、この生き方ができるのは限られたもののみだ。体が大きく強そうなゴリラが主人公なのもある種の特権に感じる。
オサムはゴリラだが、文中"二人"、"いい人"と、人として書かれている。また、絵本を読んだり、小学校の先生に手紙を書いたり、墓参りをしたりと人として行動している。が、絵では自然とともにいるゴリラが描かれており、絵と文の調和が見られないページが多い。
出来上がった文にゴリラの絵を描いただけなのか、製作の過程は分からないが、丁寧に作られた作品とは思えない。
〈キャラクター〉
体が大きく強そうなゴリラが優しい振る舞いをしても、あまり共感が得られない。つつましい生き方は確かに理想的だが、残念ながらこの暮らしが正しいとは限らない。
〈製本と出版〉
文字は大きく読みやすい。しかし使われている漢字はルビが振られているとはいえ難しい字が多い。例えば「眺」だ。この漢字は小学校で習う字ではない上に、高校在学中レベルの漢字とされる。そのため対象年齢が分かりづらい。
当サイトでは6歳~としたが、文章量の少なさからみて漢字無しの絵本にしたほうが良かったと思う。
【評点】