差別やいじめにあっても個性を活かす場所がある『やさしくてあたたかい』

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【データ】
・作品名: やさしくてあたたかい
・作者: 作/リッカルド・フランカヴィーリャ、訳/やまさきみづは(山崎瑞花)
・出版社: 化学同人
・発売年月: 2021年6月
・出版形態: 紙の本
・ページ数(作品部分): 25ページ
・サイズ: 縦26.5cm x 横18.5cm
・絵と文の比率: おおよそ 9:1 1ページ当たりの文字数は40字ほど
・対象年齢: 6歳~
・カタカナの有無: あり
・漢字の有無: あり
・ルビの有無: 総ルビ
・分かち書きの有無: あり
・縦書き、横書き: 横書き

【作者】
リッカルド・フランカヴィーリャはイタリアの絵本作家、イラストレーター。主な作品に『The Atlas of Women Explorers』『Etna. Sentieri raccontati』など。
やまさきみづは(山崎瑞花)は千葉県生まれの訳者。他に、『まんがでわかる みんなの遺伝子の謎』『世界魔法道具の大図鑑』がある。

【内容紹介】
生まれた時は、小さかったけど、それからどんどん大きくなり、そしてびっくりするほど大きくなった、“おおきなこの子”。たくさん食べて、なんでもふんづけて、ぺしゃんこにしちゃうため、みんなから「大きすぎる!」「大問題だ!」と大騒ぎに。みんなが困ると考えた“おおきなこの子”は、たったひとりで遠くの街に向かう。
【レビュー】
〈作品の主題〉
“おおきなこの子”はたどり着いた街で、その体の大きいといった特徴を生かして、立派な街を作ったり、人助けをして暮らす。

誰だって活躍できる場所があり、いじめられたり孤独を感じることがあったとしても、個性を活かす場所があることを教えてくれる絵本。読者に『やさしくてあたたかい』居場所がきっと見つかると伝えている。

〈ストーリー〉
体の特徴を理由に多くの人に疎まれる様子は、差別を表している。街を追い出され(逃れ)、受け入れてくれる街に引っ越し、働きながら暮らす“おおきなこの子”の姿は、難民及び移民が連想される。

難民とは戦争や差別、宗教や貧困などといった事情で、国を離れなければならなくなった人たちのことだ。難民の人たちには当然人権があり、差別からの保護と働く権利が与えられる。この物語は差別から逃れ、権利が与えられる様子が、いい意味で非常にあっさりと、強い主張にせず伝えている。

ただ一方で、“おおきなこの子”の持つ、体がとても大きいという彼の特徴が、最終的には移り住んだ街に貢献し、人々に感謝される存在になるという終わり方をするのは、少し引っかかる。マイノリティがマジョリティに対しその特徴を活かしながら貢献することが、平和的で正しい生き方だといったメッセージにも感じる。
〈絵と文〉
絵はシンプルだが味わい深いほんわかとした魅力的なものだ。生まれた街を追い出されるといった、割にひどい目に合う“おおきなこの子”だが、ちょっとユーモラスにも感じられる絵で切なくならずに読める。

文は非常に読みやすく、言葉がわかりやすく適切、リズミカルにも読める。よみ聞かせに適していると思う。

〈キャラクター〉
母という存在が印象的に描かれている。“おおきなこの子”の母は、小さな船に乗って、昼も夜も船を漕ぎ、愛しいわが子を追いかける。たどり着いた先で大きな体を生かし、みんなに愛されるヒーローとなった我が子を見つけ、抱きしめる姿は美しい。
〈製本と出版〉
ほとんどがひらがなとカタカナで構成されている絵本だが、『子』と『愛』のみ漢字が使用されている。なぜ小学四年生で習う『愛』の字を漢字で表したのか疑問。主に小学一年生以下の読者に向けて行われる、分かち書きがなされている絵本なので、総ひらがなで統一したほうが良かったと思う。

【評点】


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