『ブラディとトマ』 - 相手を理解することの大切さ -

【データ】
・作品名: ブラディとトマ ふたりのおとこのこ ふたつの国 それぞれの目にうつるもの
・作者: 文/シャルロット・ベリエール、絵/フィリップ・ド・ケメテール、訳/ふしみみさを
・出版社: BL出版
・発売年月: 2022年12月
・出版形態: 紙の本
・ページ数(作品部分): 33ページ
・サイズ: 縦30.5cm × 横22cm
・絵と文の比率: おおよそ 9:1 1ページ当たりの文字数は40字ほど
・対象年齢: 小学校1年~
・カタカナの有無: あり
・漢字の有無: あり
・ルビの有無: 総ルビ
・分かち書きの有無: あり
・縦書き、横書き: 横書き

【作者】
シャルロット・ベリエールは、ベルギーの児童文学作家。
フィリップ・ド・ケメテールは、ブリュッセル生まれイラストレーター。
ふしみみさをは、埼玉県生まれの翻訳家。主な作品に、『リゼッテうそをつきにいく』『わくわくどうぶつアパート』など多数。

【内容紹介】
大きな荷物を抱えて、とおい国からきたブラディの家族と、むかえるトマの家族。ふたつの家族はいっしょに住むことになったが、同じ言葉でもブラディとトマが思い浮かべるのはまったくちがう世界。難民について描き、相手を理解することの大切さを伝えている絵本。
【レビュー】
〈ストーリー〉
子どもは、なぜ? どうして? と多くの疑問を持つ。難民の家族が家にやってきたトマも、「だれ? どこからきたの? どのくらい いるの?」と分からないことばかり。
親からトマへの説明はなく、ブラディとトマの二人の距離は開いたまま。その後、子ども同士の交流によって、二人の距離は縮まる。

トマの両親は、難民の家族を受け入れる寛容な二人だけど、物語は、親と子のディスコミュニケーションの問題点も描いていると解釈できる。
子供扱いして難しいことの説明をしない、大切なことを話さないと、「他者」を遠ざける考えに陥ってしまう恐れがあるといった、親への警鐘にも読める。
コミュニケーションがいかに大事なことか、それを怠ることが差別に繋がることもあると表現しているようだ。
〈絵と文〉
見開き絵が中心の絵本だが、序盤は左ページにブラディ、右ページにトマが描かれていて、どちらの子が誰か分かりやすく、そして中央のページの境目が、二人の距離や、「差」を表していると解釈できる。
中盤から同じページに二人が描かれてからも、左側にブラディ、右側にトマの順番は継続する。そして終盤の二人が交流するページで、二人の位置が逆転する。二人の関係性がイラストでも表現されていて、秀逸に感じた。

サイドストーリーとして、ブラディの持ってきた犬の人形と、トマと暮らす猫が、「仲良し」になるエピソードが、絵で表されている。ありがちではあるけど、絵を読む楽しさがある。

〈キャラクター〉
英語の苦手なブラディのために、先生は大げさにジェスチャーを用いて、授業をする。そんな配慮をブラディもトマも、心のなかで茶化す。二人の一致した考えが、その後の接近を示唆している。

〈製本と出版〉
本の大きさは大きめ、文字の大きさは小さめ。
背景の絵と文字が重なり読みづらい箇所が一部にある。

【評点】


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