Tweet
【データ】
・作品名: ぼくのともだちは、あたまにはながさいている
・作者: 作/ジャーヴィス、訳/まきもり れい
・出版社: 岩崎書店
・発売年月: 2023年1月
・出版形態: 紙の本
・ページ数(作品部分): 29ページ
・サイズ: 縦28cm × 横24cm
・絵と文の比率: おおよそ 8:2 1ページ当たりの文字数は50字ほど
・対象年齢: 6歳~
・カタカナの有無: あり
・漢字の有無: あり
・ルビの有無: 総ルビ
・分かち書きの有無: あり
・縦書き、横書き: 横書き
【作者】
ジャーヴィスはマンチェスター在住の絵本作家、ウェブデザイナー。主な作品に、『ついておいでフロー!』『ハロウィンのかぼちゃをかざろう』などで知られる。
万木森玲は、神戸市生まれの編集者。他に『おまえたち、くっちゃうぞ~!』がある。
【内容紹介】
ぼくの友達、デイビッドは頭にきれいな花が咲いている。みんな、デイビットが大好き。デイビッドは、ふんわりしててやさしい。頭の花びらみたいに。ぼくたちは、いつもいっしょに遊ぶんだ。そんなある日、ぼくがデイビッドの花にお水をやっていると、花びらがとれてしまう。
【レビュー】
〈ストーリー〉
日常に、一つの不思議が加えられたタイプの物語で、友情と思いやりが描かれた作品。
語り手が不思議なデイビッドの、“友人”であるところが作品の魅力で、語り手は、ちょっと他の子と違うデイビッドを、あざ笑ったり否定したりなんかせずに、優しく友人関係を育んでいる。
また語り手いわく、デイビッドは「ふんわりしてて やさしい」人と序盤に紹介されていて、語り手がデイビッドと仲良くする理由は、なにも他の子と違うからとか、可哀想だから気を使ってではなく、個人として仲良くなっているという描写が素敵に感じた。
当然、ほかの子と少し違うデイビッドは、マイノリティのメタファーとして読める。頭に咲くカラフルな花々は多様性の象徴のようでもある。そして、「他者」を恐れず受け入れる姿が、語り手とその周辺に描かれている。
花が落ちてしまって思い悩むデイビッドと、彼を元気づけようと奮闘する語り手やクラスメイトの様子は、身近な人の見た目に変化が起きても、例えば脱毛症とかやけどとかが起きても、彼ら彼女らに寄り添うように接することの大切さが表現されている。
語り手とデイビッドの温かい友情は、終盤の心が通じ合う描写もあって、小さなカップルのようにも解釈できる。頭に花を咲かせ、生き生きと過ごすデイビッドは、カミングアウトを終えた性的マイノリティーのようで、クィアな視点でも読める絵本となっている。
〈絵と文〉
絵は温かみがあり、物語ととても良く合っている。語り手とデイビッドが暮らすクラスには、車いすの子や、眼鏡の子など様々なタイプの子がいて、みんなが仲良く暮らす姿は、読んでてほっとするような温かい気持ちになる。
文章は読みやすく優しい語り口で書かれている。小学校一年生くらいの語り手の口調は、過度に子どもっぽくもなく、かと言って大人び過ぎているわけでもない、等身大でいいあんばいの表現で、違和感なく親しみやすい。
〈キャラクター〉
デイビッドの頭に咲く花は、上記したような何かのメタファーとしても読めるけど、蜂が飛んできたり、先生がくしゃみをしたり、鳥の家族が来たり、友達が水をあげたりと、実際に頭に花が咲いている子がいる具体的な内容が多く、読んでてちょっとシュールな面白さもある。
〈製本と出版〉
文字は大きく、また、背景の絵と重なる箇所もない。白地に明朝体で書かれているため大変読みやすい。
『ぼくのともだちは、あたまにはながさいている』という、ひと目見て興味が湧く感じの不思議なタイトルが魅力的。
表紙に描かれた花のイラストは、立体的に加工されている(エンボス加工)。
【評点】
【関連する絵本】
Tweet