保護者に必要なこころのゆとり『かえりみち』

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【データ】
・作品名: かえりみち
・作者: 作、絵/ブリッタ・テッケントラップ、訳/木坂涼
・出版社: ひさかたチャイルド
・発売年月: 2022年7月
・出版形態: 紙の本
・ページ数(作品部分): 25ページ
・サイズ: 縦28cm × 横21.5cm
・絵と文の比率: おおよそ 8:2 1ページ当たりの文字数は80字ほど
・対象年齢: 6歳~
・カタカナの有無: あり
・漢字の有無: なし
・ルビの有無: ー
・分かち書きの有無: あり
・縦書き、横書き: 横書き

【作者】
ブリッタ・テッケントラップは、ハンブルク生まれの絵本作家。主な作品に、『なみのむこうに』『いえがあるっていいね』などで知られる。
木坂涼は、詩人・翻訳家・絵本作家。主な作品に、『やぁだ!』『しあわせぎゅ~っ!』など多数。

【内容紹介】
大きなハリネズミと、小さなハリネズミ。ふたりは家に帰るところ。小さなハリネズミが「ねえねえ、ちょっとまって」と、大きなハリネズミに言って、沈む夕日を見えなくなるまで見ていたいと伝える。
ふたりは眺めのいいところに座って、日が沈むのを一緒に見る。
【レビュー】
〈作品の主題〉
その後も小さなハリネズミは、「あのね、おつきさまをみていたいんだ」と言う。ふたりは、空を見上げて、明るい、大きな、大きな月を静かに眺める。
大きなハリネズミは、遅くなるといけないから、そろそろ帰ろうと伝えるが、その後も小さなハリネズミの興味はつきない。
のんびりとしたゆとりのある作品で、読むとなんだか落ち着く心温まる絵本。

〈ストーリー〉
小さなハリネズミは、沈みゆく夕日、大きく明るい満月、いい匂いのする野原の花など、何事にも関心を持って、美しい自然を楽しむ。絵本らしい繰り返し表現だが、少しずつ異なる工夫があって飽きずに読める。

その後もふたりは「ホーコー ホーコー」と鳴くフクロウ、池に住むカエルや魚、ホタルの群れ、数えきれないほどの星をなどを眺める。小さなハリネズミがその度に、ちょっとまって、と言い続けるのがとてもかわいい。
大きなハリネズミは、毎回、そろそろ帰ろうと急かすが、小さなハリネズミの要求をいつも温かく受け入れる。家路を急ぐようで子どもの要求をいつも優しく受け入れる大きなハリネズミの様子は、多くの保護者が時折ないがしろにしてしまうけど、必要なこころのゆとりが描かれている。
ふたりはやがて家にたどり着く。小さなハリネズミは、大きなハリネズミに抱かれて、気持ちよく眠っている。物語もだんだんと夜が深くなっていくため、読者を眠りに誘うような展開で、読み聞かせにも大変適していると感じた。

“夜”に対して、ちょっと怖いイメージを持つ幼い読者もいるかもしれないが、この“夜”を楽しむ絵本は、嫌な印象を克服するような魅力があると思う。

〈絵と文〉
絵は、可愛らしいハリネズミをメインに様々な生き物が描かれている。リス、てんとう虫、コウモリ、バッタ、蝶、トンボなど挙げたらきりがないほど描かれていて、探す楽しさもある。
森の動物たちが見守っているようで、温かい印象の物語にとても適している。

文章は、ですます調で落ち着いた雰囲気の物語によく合っている。また、繰り返し表現が特徴の絵本だが、大きなハリネズミの帰りを急かすセリフが少しずつ異なっていて、ないがしろにしたり、うんざりしない大きなハリネズミの優しさが伝わる。

〈キャラクター〉
時間を大切にすることや、自然の美しさ、大きなハリネズミと小さなハリネズミの心地よい関係性が描かれている絵本だが、ふたりのハリネズミを“親子”とは書かないところがとてもよく感じた。
様々な家族のかたちが考慮されているようで、疎外感を感じずに読める読者が増える素敵な表現だと思う。

〈製本と出版〉
本の大きさは大きめ、字の大きさも大きく読みやすい。また紙が上質で肌触りがいい。

【評点】


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