日常のささやかだけど確かな幸せ『いい一日ってなあに?』

 
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【データ】
・作品名: いい一日ってなあに?
・作者: 作/ミーシャ・アーチャー、訳/石津ちひろ
・出版社: BL出版
・発売年月: 2022年6月
・出版形態: 紙の本
・ページ数(作品部分): 32ページ
・サイズ: 縦23.5cm × 横26cm
・絵と文の比率: おおよそ 9:1 1ページ当たりの文字数は60字ほど
・対象年齢: 6歳~
・カタカナの有無: あり
・漢字の有無: あり
・ルビの有無: 総ルビ
・分かち書きの有無: あり
・縦書き、横書き: 横書き

【作者】
ミーシャ・アーチャーは、マサチューセッツ州在住の絵本作家。他に『詩ってなあに?』がある。
石津ちひろは愛媛県生まれの絵本作家、翻訳家。主な作品に、『おちばのねどこでおやすみなさい』『きょうものはらで』『マイロのスケッチブック』など多数。

【内容紹介】
ダニエルは近所の人たちと仲良し。おばあちゃんちへ向かうダニエルに、「いい一日をすごしてね!」とみんなが声をかけてくれる。「いい一日って、なんだろう?」と気になったダニエルは、いろんな人に訪ねて回ることにする。

【レビュー】
〈作品の主題〉
ペンキを塗っているサンチェスさんにとっては、空が晴れわたっている日のこと。交通安全のおじさんにとってはみんなが無事にうちに帰ってくれた日。ダニエルのおばあちゃんにとっては、大好きなダニエルがハグをしてくれたとき……。
何気ない日常を楽しむ人たちと、それに影響を受けるダニエルの「いい一日」を描いた物語で、人と人との美しい交流も魅力的な絵本。
〈ストーリー〉
ダニエルはおばあちゃんの家に向かう途中で様々な人に、「いい一日ってなあに?」と問いかける。
凧を持って公園へ向かうエマは、穏やかな風が吹いているときと答え、シッターの女性は、赤ちゃんが気持ちよさそうにお昼寝しているときと答える。

ほかにも、庭仕事をしている人にとっては花にとまったミツバチを見つけた日、ケーキやさんにとっては誰かの誕生日、ダニエルのおばあちゃんにとってはダニエルがハグしてくれた日と、仕事や遊びなどでそれぞれの人たちが、日常のささやかだけど確かな幸せを待ち望む様子が描かれている。
それらはとても平和で牧歌的な語りで描かれていて、読んでてこちらも穏やかな気分になる。

そしておばあちゃんちからの帰り道でダニエルは、向かう途中で出会った人たちが、それぞれの「いい一日」を実現している様子を見届ける。
みんなが日常を楽しみ、それがいい一日であると伝わる。お金のかかった旅行や、豪華な食事のような贅沢な暮らしではなく、日常を楽しむことが生活に彩りを加え、心が満たされるような、充実した「いい一日」を過ごす秘訣であるように描かれている。
〈絵と文〉
切り絵と油絵を組み合わせたような鮮やかなイラストが美しい絵本で、独特な魅力がある。
ダニエルの行き帰りで時間の経過が描かれていて、ペンキを塗っている隣人の家が、黄色に塗り変わっていたりする。
また、背景にはその後ダニエルが出会う人たちや、それまでダニエルが出会った人たちが小さく描かれていて、探す楽しさがあるし、繰り返し読める魅力がある。

文章は、ですます調で書かれていて、穏やかな物語にとても合っている。
ダニエルはその日あったことを詩にして家族に発表する。日常をヒントにして創作に生かす展開で、自分も詩や絵本や物語を作りたくなるような表現に感じた。

〈キャラクター〉
小さなダニエルは一人でおばあちゃんの家へ向かう。子どもの独立とたくましさが描かれている。
また、舞台であり出版されたアメリカは、治安や子育ての考え方が日本とは多少異なるため、子どもが一人で歩き、様々な人と交流する様子にも特別な意味があるようで、平和を望む物語と読み取れる。

ダニエルは様々な人たちに話しかけるが、中にはバスの運転手をしている女性や、農業をしている女性もいる。性の固定観念にとらわれない描写がさりげなくあって魅力的に感じた。

〈製本と出版〉
本の大きさはふつう。横長の絵本。文字の大きさはふつう。明朝体で、背景の絵に合わせて黒、または白の字で書かれている。背景の絵に重なり、読みづらい箇所が一部にある。

【評点】


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