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・作品名: 神社のえほん
・作者: 作/羽尻利門
・出版社: あすなろ書房
・発売年月: 2022年3月
・出版形態: 紙の本
・ページ数(作品部分): 48ページ
・サイズ: 縦20.5cm × 横21.5cm
・絵と文の比率: おおよそ 5:5 1ページ当たりの文字数は500字ほど
・対象年齢: 小学校3年~
・カタカナの有無: あり
・漢字の有無: あり
・ルビの有無: 総ルビ
・分かち書きの有無: なし
・縦書き、横書き: 横書き
【作者】
羽尻利門は兵庫県生まれの絵本作家。他に、『そらいっぱいのこいのぼり』『わくわく! れっしゃでかぞくりょこう』などで知られる。
【内容紹介】
初詣にやってきた男の子、ゆうた。家族や親戚に、何か特別なことがあるときに、神社に来ることが多いのはなぜだろうと思ったため、「神社って、何のためにあるの?」とじいちゃんに聞く。
じいちゃんは神さまと神社について教えてくれた。そして、神社の宮司さんは神社にあるものは一つ一つ意味があると説明してくれた。
【レビュー】
〈作品の主題〉
神社についてのあれこれがとても詳細に書かれていて、神社の文化を知る入門書として適している。
専門的な解説が多いことから、神社を知らない読者のための絵本というよりかは、すでにある程度神社の文化に興味を持っている読者に向けて作られた絵本に思える。
〈ストーリー〉
昔から伝わる日本の伝統文化を深く知るきっかけとなる絵本。といっても、作中で説明されている「二礼二拍手一礼(作中での表記は二拝二拍手一拝)」や、「神様が通る道だから参道の真ん中を歩くべきではない」といった言説、作法は、近年広まったもので、昔からの伝統というものではない。
神社に関する文化や物、用語など神社に関するあらゆる情報が詳細に説明されている。知識を得る魅力があるし、知的好奇心もあおられる。知らない情報に触れることでワクワクする気持ちにもなれる。
ただ、読みやすさを意識して取捨選択をしたというよりかは、可能な限り詰め込んでいるという印象を持った。
序盤の描写では、語り手の少年の子どもらしさが強調されている割に、のちのパートはやたらと専門用語や説明文が多く、ターゲットとしている読者が少し分かりづらい。子どもの視点か、入門書的位置付けか、ちょっとどっちつかずに感じた。“総合学習で取材する中学生”とかの方がよかったと思う。
また解説を聞くシーンでは、話を聞く少年の存在が物語から消えてしまっている。伝えている宮司やじいちゃんもまた埋没している。
〈絵と文〉
語り手の会話上で再現された、舞台とは異なるイラストが多いため、物語に没入できない場面も多い。
ただ、物語としての展開の妙をテーマにしている作品ではなく、図鑑のように楽しむタイプの絵本で、祭祀や神事、異なる季節や場所などが書かれた様々な絵は、どのシーンも非常に丁寧に、細緻に描かれている。また神社に関わる人々はとても生き生きと描かれている。
〈キャラクター〉
語り手の少年は、いかにも子どもらしいステレオタイプに描かれていて、キャラクターに人間的な魅力がないところが気になる。物語を進行するためだけにいるような疑問や感想の持ち方をするため、少し不自然で読んでて違和感があった。
〈製本と出版〉
小さめサイズの絵本。文字の大きさはふつう。多く書かれる説明文は小さく読みづらい。背景の絵に合わせて黒、または白の字で書かれている。文字が読みやすいように絵の色を薄く加工している所もあるが、イラストと重なって文章が読みづらい箇所が多い。
【評点】
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