風によって起きる様々な変化を繊細に、力強く描いた作品『かぜのうた』

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【データ】
・作品名: かぜのうた
・作者: 絵/フィリップ・ジョルダーノ、文/さわべまちこ(沢辺満智子)
・出版社: ポリフォニープレス
・発売年月: 2021年5月
・出版形態: 紙の本
・ページ数(作品部分): 31ページ
・サイズ: 縦20.5cm x 横20.5cm
・絵と文の比率: おおよそ 9:1 1ページ当たりの文字数は20字ほど
・対象年齢: 4歳~
・カタカナの有無: なし
・漢字の有無: なし
・ルビの有無: ―
・分かち書きの有無: あり
・縦書き、横書き: 横書き

【作者】
フィリップ・ジョルダーノはイタリア生まれのイラストレーター、絵本作家。他に『朝ごはんは、お日さまの光!』がある。
さわべまちこ(沢辺満智子)は茨城県生まれの文化人類学者、編集者。

【内容紹介】
風がふいたら、なにがおきるのか。しゃぼんだまが飛んだり、こいのぼりが泳いだり……。風鈴が鳴ったり、凧が揚がったり……。風によって起きる様々な変化を繊細に、力強く描いた絵本。
【レビュー】
〈作品の主題〉
風が吹いたら何が起きるか、小学校入学前の読者を対象に描かれた絵本だと思うが、躍動感のある絵と文字で感覚的に楽しめるようにしている工夫を感じる。読者の知性を発展させる、聡明な読者を想定して描かれた教育的価値のある絵本。

〈ストーリー〉
ストーリーらしいストーリーのあるタイプの絵本ではないが、読者の好奇心を引き出す展開が多く用意されている。たんぽぽの綿毛が飛んだり、シャボン玉を吹いたり、風鈴が揺れるような身近な風を感じるシーンと、鯉のぼりや、暴風雨、凧揚げといった、ダイナミックな絵が対比されるように描かれており飽きずに読める。
〈絵と文〉
ダイナミックな絵と身近な絵をうまく対比させ、躍動感のある文字で感覚的に楽しめるように工夫している。

風の絵を直接用いずに文章と絵を持って"風"を表している。それでも真っ白の背景と文字のみのシンプルすぎるページが多く、少し物足りない気分になる。そういう表現があってもいいと思うが、この作品にはあまりあってないと思った。せめて風の移動を表す俯瞰の絵があればいい。
また、文字を歪ませて風を表しているが、フォントにもこだわるとなおよい作品になったと思う。

〈キャラクター〉
特にキャラクターがいるタイプの絵本ではない。セリフもない。このような未就学児向けのシンプルな絵本を読む時、個人的に気になることは描かれた人物のバランスだったりする。特に男の子向け、女の子向けの絵本ではないのに、性が偏ってたりすると引っかかることも多いが、この作品はバランス良く描かれていて、多くの読者に広く読まれる想定がされているなと感じた。
〈製本と出版〉
文字は大きく読みやすい。背景の絵と重なっているページもあるが、特に読みにくいと感じる部分はない。タイトルは『かぜのうた』。安易に「かぜがふいたら」とかにせず、うたとしたところが好きだ。

【評点】

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