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【データ】
・作品名: いえのなかといえのそとで
・作者: 作/レウィン・ファム、訳/横山和江
・出版社: 廣済堂あかつき
・発売年月: 2021年3月
・出版形態: 紙の本
・ページ数(作品部分): 40ページ
・サイズ: 縦27cm × 横21cm
・絵と文の比率: おおよそ 9:1 1ページ当たりの文字数は20字ほど
・対象年齢: 5歳~
・カタカナの有無: あり
・漢字の有無: あり
・ルビの有無: 総ルビ
・分かち書きの有無: あり
・縦書き、横書き: 横書き
【作者】
レウィン・ファムはベトナム生まれ、ロサンゼルス在住の絵本作家。主な作品に『かわにくまがおっこちた』『ヴァンピリーナはバレリーナ』がある。
横山和江は埼玉県生まれ、山形県在住の翻訳者。他に、『300年まえから伝わる とびきりおいしいデザート』、『ジュリアンはマーメイド』など多数。
【内容紹介】
季節が変わるちょっと前、いつもと同じような日に、信じられないことが起こった。家の外に出ていた人たちが、家の中から出なくなった。世界のいたるところで、みんなが家に閉じこもり、じっと待つ。けれど、家の外で、みんなのために働かなくてはならない人たちもいた。
【レビュー】
〈作品の主題〉
新型コロナが世界中で蔓延し、多くの人が家に閉じこもった。一方で外に出て働く人もおり、彼らのおかげで多くの命が救われた。家の中、そして家の外を対比しながら、コロナ禍の様々な変化を細かいところまで詳しく描いた絵本。
〈ストーリー〉
パンデミックの影響による人々の暮らしが非常に丁寧に描かれている。
家の中では、オンラインで遠く離れた人と会話をしていたり、死者との別れを悲しむ人もいたり、ギターを弾いたり、ヨガを楽しんで人も、また一人じっと佇む人もいる。そして、仕事を失くした人の生活苦も描かれている。
一方家の外では、救急救命士や警察官、消防士などの安全保障に携わる者や、食品等の小売業、ごみ収集員などエッセンシャルワーカーが描かれている。
医療現場もまた丁寧で、様々な場面が描かれている。
医療関係者同士でコロナを学ぶ様子や、患者が退院する場面、助産師と幸福そうに赤ん坊抱く母親、医療従事者が疲れ果て休む様子……と可能な限り、コロナの影響を受けた多くのシーンがつぶさに描かれている。
なお少し重い描写もあるが、読者にトラウマを与えるような表現にならないように配慮と工夫がある。
新型コロナに関連する絵本はこれから先、非常に多く出版されるだろうが、この絵本は一つの基準になれる丁寧に作られた作品だ。
〈絵と文〉
絵は背景も、人々の表情もしっかりと描かれていて、時事問題を扱った出版までのスピードを意識した雑な絵本とは異なり、好感が持てる。
文章は読みやすく簡潔に書かれている。読み聞かせにも適していると思う。
〈キャラクター〉
どのページにも必ず小さな可愛い黒猫が描かれており、読者はその猫とともにコロナによって様々な影響を受けた人々の暮らしをのぞき見するように楽しんで読める。
一つ引っかかったのは、世界中の子どもたちが家の窓から外を眺めるシーン。アジア系と思われる肌の色をした子どもの目が、切れ長の釣り目で描かれている。ステレオタイプな描写で問題だ。
〈製本と出版〉
文字の大きさはふつう。背景の絵と重なり、少し読みづらいと感じる箇所がある。
【評点】
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