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【データ】
・作品名: えのぐやコロルとまっしろなまち
・作者: 作/田井宗一郎、絵/石黒しろう
・出版社: 文芸社
・発売年月: 2022年12月
・出版形態: 紙の本
・ページ数(作品部分): 31ページ
・サイズ: 縦19cm × 横26.5cm
・絵と文の比率: おおよそ 5:5 1ページ当たりの文字数は80字ほど
・対象年齢: 6歳~
・カタカナの有無: あり
・漢字の有無: なし
・ルビの有無: ー
・分かち書きの有無: あり
・縦書き、横書き: 横書き
【作者】
田井宗一郎は、沼津市生まれ。本作が初めての絵本。
石黒しろうは、フリーのイラストレーター。他に、『ママのおなかの中のボク』『にじのすべりだい』がある。
【内容紹介】
絵の具屋のコロルさんは毎日、大きなカバンに絵の具をたくさん入れ、街へ出向いては、絵の具を売っている。ある日、すべてが真っ白な街に来てしまったコロルさんは、「何をしても、何も感じない」という男の子に、黄色の絵の具を分けてあげた。すると、男の子は元気になる。
【レビュー】
〈ストーリー〉
真っ白な街に住む暗い人々に、コロルさんは絵の具を配る。すると街は活気づいていき、人々に笑顔があふれる。
絵の具を通じて描かれる物語は、人と人との交流が鬱屈とした心情を晴らし、生き生きと暮らせるようになれると表現している。
終わりに描かれている、キャンバスに街を描くコロルさんのイラストと、その後の様子となる表紙のイラストは、背景に街並みがない(キャンバスの後ろに街がある可能性を含みながら)ことから、色を分け与えたコロルさんの物語は、コロルさん自身の空想であることが示唆されている。
同時に、孤独に生きる中年が絵を描くこと、物語を作ることで救われ、感情を取り戻していく様子と解釈できる。そして、真っ白な街は、描いている途中のキャンバスと解釈できる。
コロルさんの絵の具を入れているにしては大きすぎるカバンもまた、絵を描く作業の過程のほのめかしと読める。
また、コロルさんが道に迷ったはずなのに、来た道をすんなりと戻るのは、矛盾しているようで、これもまた空想の世界の示唆と読める。
〈絵と文〉
絵は温かみがあり、物語とよく合っている。この作品のような、ひげを蓄えた寡黙な男性が物語の主人公である絵本は割に珍しいけれど、コロルさんの静かな雰囲気が、違和感なく読める。
文は、「ちいさな しみのような しろいひかり」といった表現や、「にごった いろのような きもち」といった、色や絵に関連する比喩表現が多く、物語を支えている。
〈キャラクター〉
ひとつ気になったのは、ファンタジーな舞台とは言え、黒人がいない世界であること。「色」に関する物語で、人々の交流と多様な価値観が描かれている作品なため、少し引っかかった。
〈製本と出版〉
横長の絵本。本の大きさは少し小さめ。文字の大きさはふつう。文章と絵が切り離されているため、文字は大変読みやすい。ただ見開きイラストはない。
【評点】
【関連する絵本】
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