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【データ】
・作品名: ぼくらのサブウェイ・ベイビー
・作者: 作/ピーター・マキューリオ、絵/レオ・エスピノーサ、訳/北丸雄二
・出版社: サウザンブックス社
・発売年月: 2022年4月
・出版形態: 紙の本
・ページ数(作品部分): 34ページ
・サイズ: 縦27.5cm × 横22.5cm
・絵と文の比率: おおよそ 7:3 1ページ当たりの文字数は200字ほど
・対象年齢: 小学校4年~
・カタカナの有無: あり
・漢字の有無: あり
・ルビの有無: 部分的にルビ
・分かち書きの有無: なし
・縦書き、横書き: 横書き
【作者】
ピーター・マキューリオは、非営利劇団「アザー・サイド・プロダクションズ」の芸術監督。
レオ・エスピノーサは、コロンビア出身のイラストレーター、デザイナー。主な作品に、『わたしの島をさがして』がある。
北丸雄二は、北海道出身のジャーナリスト、作家。他に『ノーマル・ハート』『愛と差別と友情とLGBTQ+』などで知られる。
【内容紹介】
8月の夜のニューヨークで、ダニーは地下鉄で布にくるまれた赤ちゃんを見つける。警察に通報し、パートナーのピートにも電話で伝えるが、その赤ちゃんとの出会いは二人の人生を大きく変えることになる。
子どもたちに新しい家庭を見つける仕事をしている、クーパー判事の提案もあり、ピートとダニーは一緒に赤ちゃんを養子にすることになる。
【レビュー】
〈作品の主題〉
実話をもとにした物語で、ピートとダニー、同性カップルの二人が、不安を抱えながらも、愛をもって、のちに家族となる赤ちゃんを迎え入れるまでを描いた絵本。偏見のない社会へ向かう力強さがある作品で、奇跡の出会いを温かみのある語りで描いた一冊。
〈ストーリー〉
物語の中盤で、ダニーは、子どもたちに新しい家庭を見つける仕事をしているクーパー判事から、法廷に呼び出される。判事に赤ちゃんを養子にしないかと提案され、ダニーは大いに望むが、一方で、男二人の家庭では簡単なことではない、と遠慮する。
ダニーの不安は、偏見のある社会が当事者に思わせてしまった結果のように映る。そんなダニーに判事は、愛があればなんだって可能だと告げる。
判事の話を聞き、ダニーは養子をとることを決意するが、愛があればなんだって可能だというセリフは、大事なものは“愛”であり、社会の同性カップルに対する偏見を無くす一歩目となるような、力強い言葉に感じた。
そして、この絵本において、“愛”という気持ちが物語のキーになっている。
家族に重要なことは遺伝的な繫がりではなく愛であること、地下鉄で赤ちゃんを救った愛、赤ちゃんを心配し病院までかけつける愛。
判事の寛大な裁量や、カップルの繋がり、貧困に悩む二人を支える親戚たち、地下鉄の同乗者の温かい視線。
そして、“愛”は周りにも広がっていくと、この作品は伝えている。
また、とんとん拍子で物語は進むが、“愛があれば何でも可能”という美しいけど無責任にも感じる言葉だけでなく、二人が赤ちゃんの世話の仕方や育て方を勉強するという重要なシーンがきちんと描かれているのも大変よく感じた。
〈絵と文〉
絵は背景まで丁寧に描かれていて、また、8月の地下鉄での赤ちゃんとの出会いから、12月に共に暮らすことになるまで、季節に応じて服装も変化している。
文章は、ピートの語りで成長した“きみ”へ、出会いを伝える形式で描かれている。
“きみ”と呼びかけながら進む二人称の作品で、幸福な結果(三人が家族となった)が約束された、将来からの視点で物語は展開するため、温かみがある絵本になっている。
一点気になったのは、序盤で「自分の家族を見つけた赤ちゃんのおはなし」と書かれていること。
赤ちゃんを育てることを決めたのはダニーとピートの二人であり、赤ちゃんは親を選ぶことはできず、その将来をゆだねるしかないため、大人のエゴを感じる表現に思った。また、「家族になる運命」という言葉が出るのも、子どもが置いてけぼりにされているような印象を持った。
〈キャラクター〉
ダニーが法廷で赤ちゃんの親になる決意をした日、そのことをパートナーのピートに伝えるが、ピートは、絶対無理だとしり込みする。
幸せな物語だが、親になることの恐れや、ためらう気持ちも隠さずに描くのはとても重要でいい表現に感じた。
〈製本と出版〉
児童書寄りの絵本で、文章も割と多め。ルビのない漢字も多くそれなりに高い年齢の読者を想定した絵本に思われる。当サイトでの対象年齢は小学校4年~とした。
【評点】
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