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【データ】
・作品名: ねことことり
・作者: 作/たてのひろし、絵/なかの真実
・出版社: 世界文化ブックス
・発売年月: 2022年10月
・出版形態: 紙の本
・ページ数(作品部分): 33ページ
・サイズ: 縦28.5cm × 横22cm
・絵と文の比率: おおよそ 8:2 1ページ当たりの文字数は100字ほど
・対象年齢: 小学校1年~
・カタカナの有無: あり
・漢字の有無: あり
・ルビの有無: 総ルビ
・分かち書きの有無: あり
・縦書き、横書き: 横書き
【作者】
たてのひろしは、神奈川県生まれの絵本作家。他に『あまがえるのぼうけん』『つちはんみょう』など多数。
なかの真実は、神奈川県生まれのイラストレーター。主な作品に、『いきものづくしものづくし』がある。
【内容紹介】
こぶしの木の小枝を束ねるのが、ねこの仕事。ある朝、ねこが仕事をしようとすると、窓にことりが止まった。ことりは、細い小枝が7本くらい必要だと言う。見かねたねこは、ことりに毎日一本ずつ、小枝を分けてあげることにする。
【レビュー】
〈ストーリー〉
ねこがことりに枝を一日に一本ずつ分けてわたす理由は、作中に説明はないけど、別に意地悪をしているわけではなくて、7日間毎日、美しいことりの歌を聞きたいからだと解釈できる。単に口にくわえて運ぶのに一本ずつじゃないと運べないからというのも、一つの理由だと思う。
ことりは小枝を7本運び終え、しばらくの間、ふたりは会わなくなる。ねこは心に穴が空いたような悲しい気持ちになるが、そんなある日、ことりは家族を連れてねこの元へ飛んでくる。そしてことりはねこに、小枝で家を作ったこと、枝が森に一つもなかったことを明かす。
環境破壊の問題を描きながら、ねこは自分の行動がことりの暮らしを奪っていたことを悟る。また、ことりがねこに枝を集める理由を話せなかったのは、出会った当初、小枝を集めるねこを恐れる気持ちがあったからと解釈できる。
描かれているのは、マジョリティとマイノリティの関係で、ことりの敬語に対して、ねこはため口なのも、その関係を補強しているように読める。ただ、ねこにその自覚はなく、ことりとは友だち(または恋心)のように認識しているようだ。しかし、ことりが枝を集めている理由が家を作るためだと分かり、また、森にその小枝が一つもなかったことを知り、ねこは自分の立場と行動に思いを巡らせる。
終わりのイラストで、受け取った花に興味は示さずに鳥のゆくえを見る、ねこの目線と表情が物語る。その様子は、申し訳ないと思う気もちを持ってるようで切なさもあるが、行動を変化する、改めようと決意する意思を持った力強さがある。
〈絵と文〉
細緻な絵が美しく、草木や花々も見ていてうっとりするような描写で、大変魅力的に描かれている。
特にねこの目が美しく、ことりとの会話で、少し気だるそうにゆったりと見つめるシーンや、ことりとの別れを惜しむ目、ことりとの再会に驚き歓喜する目など、とても印象に残る。
特に上記した、さまざまに解釈ができる終わりのイラストは美しく、考えに耽けているようで、惹きつけられる魅力がある。また、上空から捉えた絵は迫力もある。
文は読みやすくまた、ねこがことりと再会したシーンで「からだが ぎゅうっと あつくなる」といった感じの美しい表現も時折あって、読書に緩急がつく。
〈キャラクター〉
ことりと話すねこの余裕のある言い回しが心地よく読めるが、これも読み直すとねことことりの立場の違いが浮き彫りになっている表現で秀逸に思う。
ねこは花に囲まれた家にすみ、よく冷ました(猫舌だから)紅茶を好んで飲んでいる。ただ鼻が利かないようで、それらの匂いはねこには分からない。匂いが分からないねこは、100とおりの匂いを想像できると語るが、繰り返しになるけど、憂う表情の終わりのイラストがこの絵本最大の魅力で、その想像力で、ことりの将来を案じているようだ。
〈製本と出版〉
本の大きさは少し大きめ。縦長の絵本。文字が背景の絵と重な箇所があるが、読みづらい部分はない。
フォントは明朝体で読みやすい。
【評点】
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