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【データ】
・作品名: はだしであるく
・作者: 文/村中李衣、絵/石川えりこ
・出版社: あすなろ書房
・発売年月: 2022年7月
・出版形態: 紙の本
・ページ数(作品部分): 36ページ
・サイズ: 縦27.5cm × 横23cm
・絵と文の比率: おおよそ 9:1 1ページ当たりの文字数は80字ほど
・対象年齢: 小学校2年~
・カタカナの有無: あり
・漢字の有無: あり
・ルビの有無: 総ルビ
・分かち書きの有無: なし
・縦書き、横書き: 横書き
【作者】
村中李衣は、山口県生まれの児童文学作家。主な作品に、『ねむろんろん』『あららのはたけ』など多数。
石川えりこは、福岡県生まれのイラストレーター、絵本作家。他に、『庭にくるとり』『ほんやねこ』などで知られる。
【内容紹介】
畑のスイカをつついたカラスをおいかけていたら、くつがぬげちゃった“わたし”。まてまて、カラス!、と裸足でカラスをおいかける。畑のなかは、スイカの葉っぱのうぶ毛が足にあたって、ちくちくぞわぞわ。家の前の道路に出ると、足のうらに小石があたって、いたい。
【レビュー】
〈作品の主題〉
その後も“わたし”は、裸足で歩き続ける。町の公園はセcミが出た穴がいっぱい。マンホールの上は、びっくりするほど熱くて、目玉焼きができそう。横断歩道を渡ると、あれ、白いところは熱くない。
語り手の子どもが足のうらで地球を感じて、たくさんの発見を楽しむ絵本。
〈ストーリー〉
畑のスイカを食べていたカラスを、裸足で追いかけるというちょっと地味な導入から、語り手の子どもは、アスファルトの感覚の違いや、横断歩道の熱の違いなどの様々な発見をする。
通行人など、多くの人に白い目で見られながら、裸足で歩くことによって注意力が増して、セミの穴を見つけたり、川に足を入れて温度の違いを知ったりと、“わたし”は少しずつ自然の魅力を知る。
具体的な感覚の描写が、読んでて自分も体感できるようで楽しく読める。
裸足になることで、自分と自然の隔たりがなくなり、“わたし”は、自然と一体化するように、川に沈む。
川から出て“わたし”はスイカ畑に戻るが、カラスへの執着を忘れて、達観したように裸足で歩き続ける。
ちょっと飛躍した解釈かもしれないが、“わたし”が川に沈み自然と一体化するシーン、元いた場所に戻る展開からは、死や輪廻が連想される。ただ、暗い終わりではなく、“わたし”が裸足で歩き得た、世俗を超越したような悟りの境地は、とても前向きで勇気をもらえる。
〈絵と文〉
躍動感のある絵が魅力的な絵本。最近はCGの絵本も増えたが、場面に合わせて体が伸びたり、一部分が大きく描かれたりするのは、手書きのイラストならではの良さだと思う。
文章は子どもの語りで進行するが、詩的でリズミカルに読める文で、また、独特な言葉の使い方が楽しく読める。
例えばアスファルトを歩くシーンで「道路の王様になった気分。」と言ったり、公園でたくさんのセミを見つけたときは「セミの大宇宙」と表現する。
ほかの絵本ではあまり見かけないような言い回しが多く、その工夫が読書の緩急になっている。また、子どもの語りは、親しみやすさと聡明な視点とがうまく組み合わさっており、子どもの二面性が表現されていて、魅力的に感じた。
〈キャラクター〉
語り手の子どもは、活発で冒険心にあふれていて、想像力が豊かで、詩的な語りも聡明で、はだしで歩いている時の感覚もユーモアたっぷりに表現されている。
読んでて憧れてしまうような、とても魅力的な人物で、いわゆる「絵本的」な、ステレオタイプで分かりやすい子ども像とは異なるし、物語を成り立たせるための都合のいい存在とも違う、とても人間的で、なかなか次の行動や言動が想像つかないような素敵な人物に描かれている。
〈製本と出版〉
本の大きさはふつう、文字の大きさもふつう。文字は背景の色に合わせて黒、または白の字で書かれている。
文字が絵と重なる箇所があるが、反転色で背景の色が薄く加工されていて読みやすい。
【評点】
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