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・作品名: わたしのかぞく みんなのかぞく
・作者: 作/サラ・オレアリー、絵/チィン・レン、訳/おおつかのりこ
・出版社: あかね書房
・発売年月: 2022年3月
・出版形態: 紙の本
・ページ数(作品部分): 30ページ
・サイズ: 縦26cm × 横22.5cm
・絵と文の比率: おおよそ 9:1 1ページ当たりの文字数は40字ほど
・対象年齢: 6歳~
・カタカナの有無: あり
・漢字の有無: なし
・ルビの有無: ー
・分かち書きの有無: あり
・縦書き、横書き: 横書き
【作者】
サラ・オレアリーは、カナダの作家。他に『サディがいるよ』がある。
チィン・レンは、トロント在住のイラストレーター。他に『いってきます』で知られる。
おおつかのりこ福島県生まれの作家、翻訳家。主な作品に『100歳ランナーの物語 夢をあきらめなかったファウジャ』『くらやみきんしの国』など。
【内容紹介】
“わたし”は、学校で先生が「じぶんの かぞくの、とっておきの はなしを、みんなにきかせてね」と言ったのを聞いて、“わたし”の家族はほかと違うから、と何を話せばいいか困ってしまう。
でもクラスメイトの様々な形の家族の話を聞いて、“わたし”は、家族そろって出かけた時のことを話し始める。
【レビュー】
〈作品の主題〉
「普通」とされる多くの家族とは違うけど、でも強く結ばれている家族を応援する作品で、身近にいるはずの多様な家族の形に気づき、偏見を無くすきっかけとなる絵本。
〈ストーリー〉
子どもたちは先生に促され、自分の家族のことをクラスメイトに話す。ステップファミリーである“わたし”は、何を話せばいいかと思い悩む。
ステップファミリーとは、親と血縁関係のない子どもがいる家族のこと。
一方や両方の親の連れ子だったり、同性カップルの養子だったりと、様々なケースを包括的に表した言葉で、この絵本もまた多様な家族のかたちを描いている。
それぞれの家族の話を、子ども自身が子どもの目線でみんなに親しげに話す様子は、とても幸せそうで、また温かさと力強さがある。読んでて勇気づけられる読者も多いと思う。
語り手の“わたし”も、自分の家族の話をすることを躊躇していたが、クラスメイトの話を聞いて勇気づけられる。
そして、“わたし”は、家族みんなで公園に行ったとき、公園でおばさんに、「どのこが ほんとうのこかしら?」と聞かれた際、“育ての母”が、うちには『まぼろし』の子なんていない、みんなが『本当の子ども』だと答えたエピソードをクラスメイトに話す。
語り手の“わたし”が、マイクロアグレッション(何気ない日常で現れる偏見や差別に基づく言動のこと)を受けた過去と、母親の秀逸な切り返しを披露する様子は、読者に普段の行動を顧みさせて、偏見を無くす一歩目となるような、大変優れた表現に感じた。
〈絵と文〉
絵は登場する13人の子どもたちが、それぞれ特徴を持ち、表情や仕草もとても生き生きと、誰もがとても幸せそうに描かれている。
文章は、読みやすく子どもたちの自然な語りで書かれていて、過度な役割語がないのもこの作品によく合っていると思う。
〈キャラクター〉
登場するキャラクターは、養子の多い家族、離婚した両親とで交互に過ごす子や、祖母と二人で住む子、人種の違う家族、障害を持った親と暮らす子、連れ子同士の家族、同性カップルの子などが描かれている。どの子どもたちも、幸せそうで活発に過ごしている所がとても素敵だ。
マイノリティだけでなく、幼馴染でずっと仲良しな親だとか、音痴だけど歌うのが好きな親だとか、偏見の対象とならないような家族も混ざっているのも優れた表現に感じた。
また、子どもの目線で語られていて、上記したような、人種や性、障害などそれぞれの家族の形を説明せず、曖昧に描いているところが美しい。
そして、様々な環境にあっても、わたしはわたしと思うことの大切さも伝えている。
〈製本と出版〉
本の大きさはふつう。字の大きさは少し小さめ。文字が背景の絵と重なる箇所があるが、読みづらい部分はない。
【評点】
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