戦争で難民となった子どもの現実『せんそうがやってきた日』

 
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【データ】
・作品名: せんそうがやってきた日
・作者: 作/ニコラ・デイビス、絵/レベッカ・コッブ、訳/長友恵子
・出版社: すずき出版
・発売年月: 2020年6月
・出版形態: 紙の本
・ページ数(作品部分): 29ページ
・サイズ: 縦25cm × 横29cm
・絵と文の比率: おおよそ 9:1 1ページ当たりの文字数は20字ほど
・対象年齢: 小学校2年~
・カタカナの有無: あり
・漢字の有無: あり
・ルビの有無: 総ルビ
・分かち書きの有無: あり
・縦書き、横書き: 横書き

【作者】
ニコラ・デイビスは、イギリスの動物研究者。絵本作家。他に「うまれてそだつ」がある。
レベッカ・コッブはイギリスの画家、絵本作家。他に「あなのなかには…」など。
長友恵子は北海道生まれの児童文学翻訳家。他に「オオカミさん、いまなんじ?」などがある。

【内容紹介】
学校にいた時、戦争がやってきた。戦争は町をがれきに変える。なにもかも奪い、わたしはひとりぼっち。わたしは、歩いて歩いて、まだ戦争がきていない所へ行く。とある学校に着くが、イスがないことを理由に立ち入りを断られてしまう。

【レビュー】
〈作品の主題〉
戦争で難民となった子どもたちの現実を描き、絵本を通しその現状を広く伝える目的をもった価値ある絵本。

少女の身に降りかかった戦争の悲惨さ、残酷さがまざまざと書かれている。安全な国に住む読者に、過酷な状況に追い込まれた子が多くいること、支援が必要なことを呼びかけている。

〈ストーリー〉
最初のページで家族の団らんが描かれているが、戦争がやってきて、家族は消え、家はなくなってしまう。この辺り、ページの制約もあるだろうが、前半の幸せなシーンをもう少し増やしたほうが物語に厚みが出たと思う。

直接的には死を描かずに、読者にトラウマを与えないようにしながら、戦争の悲惨さを表している。死や暴力の扱い方に配慮がある。また、それなりに前向きな終わり方ではあるが、安易な感動の押し売りにもせず、深刻な難民の現状を伝えているのもいい。

現実と地続きの難民問題を描いている。この絵本を通じて難民について考えること、支援をすることなどのアクションを起こしてほしいとの思いが伝わってくる。

〈絵と文〉
詩の調子で書かれた文は、読みやすく芸術性もある。擬音は少ないがリズミカルに読める。
ほのぼのとした絵が辛い展開と対比され余計に心にくるものがある。特に少女の孤独が強調されたシーンは大変に悲痛な思いに駆られる。

一方、戦争の悲惨さと難民の苦しさを伝える絵本ではあるが、子供のトラウマにならないよう配慮もなされている。

〈キャラクター〉
表情は乏しいがあえてなされたものだろう。残酷な出来事の連続で悲痛な顔までされたらくどい印象を受けるだろうし、目から登場人物の思いが伝わる。

髪の毛の書き方など一見雑なように見えるが、子供の目線で印象的に書かれていると思う。また、視点が一定で読者が主人公と一体化できるよう描かれている。

〈製本と出版〉
文字の大きさは小さめ。黒もしくは白の字で書かれているが、背景の絵と重なり読みづらいと感じるページがある。

【評点】


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