東日本大震災で被災した保育所の実話を元に描いた作品『笑顔が守った命』

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【データ】
・作品名: 笑顔が守った命 津波から150人の子どもを救った保育士たちの実話
・作者: 作/あいはらひろゆき、絵/ちゅうがんじたかむ
・出版社: サニーサイドブックス
・発売年月: 2021年3月
・出版形態: 紙の本と電子書籍
・ページ数(作品部分): 29ページ
・サイズ: 縦19cm × 横24cm
・絵と文の比率: おおよそ 6:4 1ページ当たりの文字数は100字ほど
・対象年齢: 小学校3年~
・カタカナの有無: あり
・漢字の有無: あり
・ルビの有無: 総ルビ
・分かち書きの有無: なし
・縦書き、横書き: 横書き

【作者】
あいはらひろゆきは仙台市出身の絵本作家。『くまのがっこう』シリーズなど。
ちゅうがんじたかむは宮崎県出身の絵本作家。ほかに『ヴァモス!』がある。

【内容紹介】
2011年3月11日。中野栄あしぐろ保育所は、強い地震と津波におそわれる。保育士たちは、2階に避難させた子どもたちと自分自身を勇気づけるため、必死に笑い、そして大きな声で歌う。東日本大震災の時、実際にあった愛と勇気の物語。

【レビュー】
〈作品の主題〉
東日本大震災で被災した保育所での二日間を保育士の目線から語る、実話を元に描いた作品。震災を忘れないために、その体験を語り継ぐ絵本。震災当日、保育士たちが、子どもたちの心を支えるために、愛を持ってどのように行動し、何を選択したかが描かれている。

〈ストーリー〉
正直言って絵本としてのストーリー展開は気になるところが多い。中盤に所長先生が登場するシーンは割と感動的に描かれているが、事前にその存在は書かれていないため、その登場は唐突に感じる。また、子どもたちを2階へ避難させた後、大切な卒園アルバムを2階へ運ぶという描写があるが、その後卒園アルバムは作中一切触れられていない。手渡すシーンがあっても良かったと思う。実話を元にした物語とはいえ、なんだかまとまりがない。

〈絵と文〉
絵は親しみやすく丁寧な取材をもとに描かれているようだ。保育士たちはとても生き生きとしていて表情豊かに描かれている。子どもたちを勇気づけようと必死に笑顔で励ましたりするシーンはとても素敵で心打たれる。

文はですます調で書かれている。文章は読みやすいが、使われている漢字や語りの口調、表現を見ると、子どもを想定して書かれた絵本というよりかは、大人向けに書かれた絵本のように感じる。当サイトでは対象年齢を小学校3年生~とした。

〈キャラクター〉
語り手は保育士だが、終盤まで名前は一切書かれていない。ラスト数ページでゆうか先生、ともよ先生、めぐみ先生などと唐突に明かされる。といっても絵を見てもどの保育士が誰なのかは分からない。語り手の保育士はよしみ先生だが、その名前もこの終盤のページでのみ書かれている。登場人物たちが際立ってるようにはあまり感じない。

また、タイトルに150人の子どもを救ったと書かれているが、作中では150人もいるように思えない。せいぜい15人程度だ。だったら一人の子どもに焦点を絞って丁寧に描いたほうがいいと思った。

〈製本と出版〉
総ルビだが、漢字が多め。「憩」や「避」など小学校6年間で習わない字も多い。上記したが、子どもたちの読者を想定して書かれた絵本というよりかは、大人向けに書かれた絵本だろう。

一部、字と背景の絵が重なり、読みづらいと感じるページがある。

また、『笑顔が守った命 津波から150人の子どもを救った保育士たちの実話』というタイトルは、壮大でいかにも感動を売りにした絵本といった感じだ。

【評点】


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