亡くなった人との再会を願う気持ち『海とそらがであうばしょ』

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【データ】
・作品名: 海とそらがであうばしょ
・作者: 作/テリー・ファン&エリック・ファン、訳/増子久美
・出版社: 化学同人
・発売年月: 2020年11月
・出版形態: 紙の本
・ページ数(作品部分): 42ページ
・サイズ: 縦24cm × 横29cm
・絵と文の比率: おおよそ 9:1 1ページ当たりの文字数は20字ほど
・対象年齢: 6歳~
・カタカナの有無: あり
・漢字の有無: あり
・ルビの有無: 総ルビ
・分かち書きの有無: あり
・縦書き、横書き: 横書き

【作者】
作者のテリー・ファンとエリック・ファンは兄弟。多くの子ども向けの本を執筆。 他に『つのぶねのぼうけん』など。
増子久美は翻訳家。他に『オリーともりのがっこう』などがある。
【内容紹介】
海のそばでくらすフィンは、おじいさんがきかせてくれた、「海とそらがであうばしょ」の話を思い出す。いっしょに見に行く約束をしていたおじいさんは、もういない。フィンが昼寝をすると、いつの間にか海に出ており、船旅が始まっていた。
【レビュー】
〈作品の主題〉
いなくなってしまった愛する人との思い出を、大切にしながら前を向く物語。心が踊るような未知の冒険を、想像力を発展させられる壮大な絵に描いている。

亡くなってしまった人ともう一度会いたいと願う、誰にとってもなかなか割り切れない気持ちを救う作品。

〈ストーリー〉
亡くなってしまった人ともう一度会いたい気持ちを救う作品だが、ストーリーは割にありがち。祖父の死を除けば、ほとんど『かいじゅうたちのいるところ』などの想像の冒険譚。ただ、死を直接描かず、悲しみに暮れるようなつらい描写も無く、その喪失感を埋める優しい物語を描いたのはとても秀逸に思う。

本の島、大きな貝がらの島を探検する魅力的なページがあるが、どちらも1ページであっさりと終わる。もう少し描写を増やしたほうが、困難に打ち勝ち目標を達成するような喜びのある展開になったはずで、少しもったいないように感じる。

〈絵と文〉
文章はですます調で読みやすく読み聞かせにも適してると思う。

主人公のフィンはアジア系の少年。おじいさんの服装、ヒゲの形からは中国を連想する。龍舞が描かれていて、水餃子というワードも登場するが、主人公の家には盆栽が置かれている。盆栽は元々中国伝来のものであるが、日本で発展した文化の一つ。それぞれにあまり調和が見られず、なんだか雑にオリエンタルなものを集めたようなステレオタイプなアジア描写が気になった。

少年の目的地でタイトルでもある「海とそらがであうばしょ」は幻想的でとても迫力がある。ただ表紙の絵とほぼ同一なため、なんだか既視感があって驚きは少ない。
〈キャラクター〉
冒険の案内役である金の魚はおじいさんの分身だろう。その後月に姿を変えるが、少年を思う強い気持ちが伝わる。

おじいさんの明確な描写は少ないものの、少年フィンとおじいさんがどれだけお互いを愛していたかははっきりとわかる。

〈製本と出版〉
タイトルは「海とそらがであうばしょ」だが、なぜ「海」だけ漢字なのか分からない。「海」は小学校2年生で習う漢字であり、「空」は小学校1年生で習う漢字だ。漢字の使い分けに疑問が残る。ひらがなとカタカナで構成する絵本でも良かったと思う。

字は大きくて読みやすいが、一部背景の絵と重なり読みづらいと感じるページがある。

【評点】


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