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【データ】
・作品名: おまえたち、くっちゃうぞ~! わにがめのアルとちいさなさかなたち
・作者: 作/ジョン・ヘア、訳/万木森玲
・出版社: 岩崎書店
・発売年月: 2022年9月
・出版形態: 紙の本
・ページ数(作品部分): 39ページ
・サイズ: 縦25cm × 横25cm
・絵と文の比率: おおよそ 9:1 1ページ当たりの文字数は40字ほど
・対象年齢: 小学校1年~
・カタカナの有無: あり
・漢字の有無: あり
・ルビの有無: 総ルビ
・分かち書きの有無: あり
・縦書き、横書き: 横書き
【作者】
ジョン・ヘアは、ミズーリ州在住の絵本作家。他に、『みらいのえんそく』『みらいのえんそく かざんのしまへ』がある。
万木森玲は、神戸市生まれの編集者。この絵本が、初めての訳書。
【内容紹介】
わにがめのアルは、魚をとるのが大好き。池の底で、口を大きく開けて、魚がやってくるのを待っている。おいしそうなミミズにみえるベロをゆらゆら。
しばらくすると、口のなかに、魚たちが集まってきた。アルは、一気に食べようとする。
【レビュー】
〈ストーリー〉
魚をとるのが大好きな、わにがめのアルは、大きく開けた口の中で、魚たちがベティおばあちゃんの誕生日パーティーを始めるので、食べるのを躊躇して舌を引っ込める。
そんなほっとするような心温まる流れで終わるかと思いきや、近くにミミズの付いた釣り糸が落ちてきて、ベティおばあちゃんは食べようとしてしまう。
絵本に限らず小説でも映画でも、読者(視聴者)は次の展開を予想しながら読み進めて、物語に納得したり、裏切られたりして楽しむが、この絵本はその魅力がたっぷりで、素敵な絵本らしい心優しい展開と、驚く出来事が組み合わさっていて、楽しく読める一冊になっている。
また、隅の方で青いザリガニが貝を食べようとしている様子がサイドストーリー的に連続して描かれている。
魚を食べようと口を開け続けるワニガメと、口を開けない貝を食べようとするザリガニは、対比されていながら共通点を持っている。
ペットとして連れて来られ、捨てられてしまい外来生物として生態系に悪影響を生んでいるのは、ワニガメにもザリガニにも共通している。
また、青いザリガニは野生ではほとんどいなく、大抵が人の介入で作られた個体のため、外来種を捨てる人間の問題が暗喩されているように解釈できる。
〈絵と文〉
絵は生き物の特徴を捉えていて、かつとても親しみやすいもので、表情もまたとても生き生きとしている。
物語の序盤は弱肉強食の世界を描いた感じだけど、そのあたりの描写も文章の軽妙さもあって怖さはなく、なんだか読んでて笑顔になれるような楽しさがある。
〈キャラクター〉
実際のワニガメも、舌の先がミミズのように突き出ていて、それをエサに見せかけて獲物をおびき寄せるといった、変わった方法で捕食している。
捕食者側の目線で描かれた絵本は割にめずらしいけれど、ワニガメの絵本も相当少ないと思う。とても新鮮に読める。
当然この絵本のワニガメのアルも、生きるために食事は必要だろうけど、アルは、魚をとれなくても、友達に今日あった出来事を楽しく話すのが好きだから別にいいと語る。
魚たちを食べなかったことを「善い行い」をしたといった、正義の感じにはしないで、また、捕食する行為を安易に「悪」と描かない、池に住む生き物たちの、当たり前の暮らしを前提にしながら、想像をプラスしたような絵本で、素敵な表現に感じた。
〈製本と出版〉
本の大きさはふつう。正方形の絵本。文字が背景の絵と重なって、読みづらい箇所が一部にある。
フォントに工夫がある絵本。印象的なセリフで文字が大きくなっていたり、配置が変わっていたりで楽しく読める。
【評点】
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