『わすれないでね ずっと だいすき』 - 認知症のおばあちゃんと孫 -

 
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【データ】
・作品名: わすれないでね ずっと だいすき
・作者: 文/ジーン・ウィリス、絵/ラケル・カタリナ、訳/前田まゆみ、監修/筧裕介
・出版社: 小学館
・発売年月: 2022年9月
・出版形態: 紙の本
・ページ数(作品部分): 30ページ
・サイズ: 縦22.5cm × 横26cm
・絵と文の比率: おおよそ 8:2 1ページ当たりの文字数は80字ほど
・対象年齢: 6歳~
・カタカナの有無: あり
・漢字の有無: なし
・ルビの有無: カタカナにルビ
・分かち書きの有無: あり
・縦書き、横書き: 横書き

【作者】
ジーン・ウィリスは、イギリス出身の作家。他に『そこでしちゃダメ!』『モグラくんがみたおひさま』など多数。
ラケル・カタリナは、スペイン出身のイラストレーター。
前田まゆみは、神戸市生まれの絵本作家。主な作品に、『オーリキュラと庭のはなし』『おかいもの』などで知られる。
筧裕介は、デザイナー、工学博士。他に、『認知症世界の歩き方』『持続可能な地域のつくり方』がある。
【内容紹介】
ジョージは、キャサリンさんの家を訪ねる。「うれしい! しばらく、あえなかったわね」「きのういらいだね」「あら? きのうあったばかり?」
キャサリンさんは、わすれてばかり。時々、ジョージの名前まで忘れてしまう。でもジョージは気にしない。認知症のおばあちゃんと孫の、愛情の物語。

【レビュー】
〈ストーリー〉
キャサリンさんとジョージは祖母と孫の関係だが、ジョージは中盤まで「おとこのこ」とだけ呼ばれ、読者も二人の関係性がはっきりとは分からないまま、読み進めることになる。
中盤でキャサリンさんが男の子のことをジョーと呼んだ際、男の子がぼくはジョージだよ、と訂正したところで、祖母と孫の関係が明らかになる。

読者も認知症のキャサリンさんと同じ視点で読めるような構成で、男の子が認知症を自然に受け入れている様子に心打たれるし、勇気をもらえる。
小さな子どもが認知症を知るきっかけにもおすすめの絵本。
〈絵と文〉
絵は温かみがあって、心優しい物語にとてもあっている。
物語の中盤で、男の子とおばあちゃんは家の近くのベンチに行くが、そこで男の子はベンチに落ちた花を拾っている。それを家に持ち帰り、おばあちゃんの耳にそっと掛ける。
男の子の愛情が表されたシーンで、絵を読む魅力もあって美しい表現に感じた。

〈キャラクター〉
『わすれないでね ずっとだいすき』というタイトルは、一見、孫のジョージのセリフのように見えて、祖母のキャサリンさんのセリフ。
ジョージは、おばあちゃんが認知症であることを受け入れて、自分の名前を忘れても「ぼくが だれでも べつにいいよ。」と話す。
それでも、おばあちゃんがずっと心のなかで、自分を愛していてくれることを忘れないでいようと決意する。
物語を読み進めるに連れて印象が変わる素敵なタイトルに感じた。
〈製本と出版〉
カタカナにルビが振られている、割とめずらしい絵本。文章も大和言葉が中心で、小さな読者でも読みやすいと思う。

【評点】


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