手術への不安と友達への思いが重なる『ことりになったら』

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 【データ】
・作品名: ことりになったら
・作者: 作、絵/ひらてるこ
・出版社: 岩崎書店
・発売年月: 2022年3月
・出版形態: 紙の本
・ページ数(作品部分): 32ページ
・サイズ: 縦27cm × 横22cm
・絵と文の比率: おおよそ 8:2 1ページ当たりの文字数は70字ほど
・対象年齢: 小学校1年~
・カタカナの有無: あり
・漢字の有無: なし
・ルビの有無: ー
・分かち書きの有無: あり
・縦書き、横書き: 横書き

【作者】
ひらてるこは東京都在住の絵本作家。主な作品に、『さようならパピィ』『いたずらトンビをやっつけろ』などで知られる。

【内容紹介】
話すことが苦手なおーちゃんは、ある日、胸に穴が開いてることを理由に入院することになった。となりのベッドのめぐちゃんと仲良くなったけど、手が冷たいことをからかわれて、めぐちゃんのほっぺをつねってしまう。謝ることができないまま、めぐちゃんの手術の日がやってきた。おーちゃんは、めぐちゃんのために、羽の王冠を作り、手術へ向かうめぐちゃんの頭にそっと載せる。
【レビュー】
〈作品の主題〉
言葉を出すのが苦手で、なかなか謝ることのできないおーちゃんを描いた物語。
病気や手術の不安を抱えている子どもたちを応援するような作品で、手術を控えるおーちゃんとめぐちゃんは「ことりになりたい」と願うが、その気持ちには、様々な思いを巡らせて読むことができる。ごめんねの一言が言えない人を後押ししてくれる絵本でもある。

〈ストーリー〉
入院中の子どもたちに生まれる友情を描いた作品で、手術への不安も描きながらも、あくまでも物語の焦点は友人関係に当たっている。

おーちゃんは「胸に穴が開いている」ということを理由に入院する。気胸かなと思うが、作中ではどんな病か明記されていない。これも、病気の詳細は子どもにとってはさして問題ではなく、入院生活やそこでの友だちとのやりとりが重要だと表されているようだ。
また、入院中の読者に、どんな病気でも自身と重ね合わせやすいようにとの配慮もあると思う。
おーちゃんが話すことが苦手なこと、おーちゃんや友達の病気や手術、友達に謝りたいけれどなかなか踏ん切りがつかないもどかしさ、小鳥になりたいと願う気持ち……。
と、一作の絵本にしてはちょっとテーマが多く、紛らわしく混在しているような印象も受けるが、それぞれのテーマは背景で繋がっている。

話すことが苦手なことと、胸に穴が開いている病気は一見して無関係だが、入院せざるを得ない状況と、言いたいことを言えない歯がゆさが、本人の希望とは無関係に「閉じこもる」という点で共通している。
そして語り手のおーちゃんは、小鳥になりたいと思い、友達にも小鳥になってほしいと願うが、小鳥とは自由の象徴であり、閉ざされた状況からの解放を表していると読み取れる。

〈絵と文〉
絵は温かみがあり、また表情も豊かで特におーちゃんが、めぐちゃんのほっぺをつねっているシーンは躍動感があって印象に残る。

他にイラストから読み取れる箇所として、おーちゃんの前歯が抜けているように描かれているページがある。ある程度の年齢が想像できるようにしているだが、一方で、友達のめぐちゃんは、序盤では前歯が抜けたイラストが、中盤で生え揃って描かれている。
永久歯への生え変わりで時の経過を表しているとも読めるが、もしかしたらシーンによって前歯をデフォルメして描いているだけであまり意味はないかも。

文章で一つ気になったのは、終盤に書かれる以下の文で、
「さくらの さくころ、おーちゃんも たいいんです。」
とある。桜の咲くころとあるから、どこか他にも季節を表すシーンがあり、こちらも時の経過が読み取れる描写かと探してみたが、文、服装、背景などをみても季節を読み取れる箇所はなかったので疑問に思った。
単に「桜の咲くころ」という文の前向きな印象を理由に、用いたのかもしれない。

〈キャラクター〉
おーちゃんは、毛布の綿毛をちぎって吹き飛ばしたり、色を塗った画用紙をビリビリに破いたりする。とても積極的で大胆な行動をする性格のようだが、一方で声を出すのは苦手で、謝罪をためらいおどおどとしたりする。
子どもの持つ複雑な両面性、画一的でない性格がうまく描かれていると感じた。

〈製本と出版〉
文字の大きさ少し小さめ。一部に背景の絵と重なる箇所があるが、読みづらい部分はない。
漢字なしの絵本だが、フォントは映画字幕に似た特徴的なもので、ひらがな、カタカナを覚えたばかりの読者は少し苦労するかもしれない。あまり作品の雰囲気に合ってる気もしないので、もっと読みやすいフォントでよかったと思う。

【評点】


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